第54話 篭絡
「ローリエを……返せ!」
ハバネロに渾身の突きを打ち込もうと、玉座に詰め寄ったところで、玉座に仕込まれた吹き矢が私めがけて打ち出されてきた。
「うわ!」
とっさに手で顔を守るが、吹き矢は手に刺さる。
瞬時に体中に痺れを感じた。
「ははは。転移の結婚指輪か。夫を助けに来るとは健気な花嫁だ」
私はまず痺れを取り除こうと『
そうか、これは毒か。
私は『
「ほう、『
そう言って、皇帝ハバネロは私に
頭がクラクラしてくる。
「ふふふ。どうだ。私の部下になる気はないか?」
意識が朦朧として、この人に仕えることが快楽であるような気になってくる。
私は膝をつく。錫杖を持っていなければ、地に手を着いてしまっていただろう。
これは精神干渉系のスキルだとわかっていながらも
その時、霞かかった頭にローリエの声が聞こえてきた。
ローリエ(サフラン!)「サフラン!」(サフラン!)「サフラン!」
それは私の全チャンネルを通して聞こえたようだった。
ローリエの声が、私の内側から、外側から聞こえ響く。
そうだ。私はローリエと一緒に楽しく過ごしたいんだ!
ハバネロなんぞに仕える暇はない!
力を振り絞って錫杖を振り、『
シャラン!!!
頭がすっきりと、はっきりとする。
私はキッとハバネロを見据えた。
「な、なんだ。なぜ効かん!」
「私とローリエを邪魔するな!」
私は今度こそ、玉座に詰め寄り、渾身の突きを打ち込んだ。
「ぐえ!」
ハバネロは喉を突かれ、玉座ごと後ろに吹っ飛ぶ。天幕が破れ、更に遠くまで飛んだ後に地面を擦って止まった。
私はすぐにローリエの縄を解く。
「ローリエ! 無事!?」
「うん! サフラン、助けにきてくれてありがとう!」
天幕が一部破れ、ハバネロが転がっているのを見て、周りの兵士が何事かと集まり始めている。
私たちは天幕を出たが、逃げる隙間もないほどの兵士たちに取り込まれていた。
シャラン!
私は取り囲んでいる兵士たちを『
しかし、逃げる隙間もないほどに取り囲まれており、これでは脱出できない。
私たちが脱出できないのと同じように、囲みの外側にいる帝国軍も内側にいる私たちに近寄れなくなっている。まさに人の壁だ。
「どうしようか……」
さすがに自陣の中ということもあり、矢や火の玉が飛んでくることもないが、身動きできない状態にあることは事実だ。
そこに私たちを囲んでいる輪の外側がワアワアと騒がしくなってきた。
「なんだ?」
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