第49話 告白

 その日の夜、ローズマリー先生やパセリたちは街中の宿に泊まったのだが、私とローリエだけは、スターアニス王女の計らいで、王宮内の来賓用の部屋に宿泊することになった。


「ねえ、ローリエ。本当に良かったの? 本当は男の人と結婚したかったんじゃないの?」

「サフランと出会う前ならそう考えていただろうとは思うけどね。でもサフランに出会って、今となってはサフランと一緒に生きていきたいという気持ちは本当だよ」

「そっか、ありがとう」

「サフランこそ、良かった? 本当は嫌だったりしなかった?」

「いや、以前話したこともあるけど、私はローリエとなら結婚したいと思っていたよ」

「いつだったか、そう言ってくれていたよね」


 そこで私は押し黙ってしまった。

 私はローリエが本当は女性だけれども男装していることを知っている。

 でも、ローリエは私が転生前は男性だったことを知らない。

 これって不公平ではないだろうか?

 このことを話さずに結婚して良いものなのだろうか?


「ねえ、ローリエ」

「なあに? サフラン」

「私さ、本当は別の世界に住んでいて、気を失って、目を覚ましたらこの世界に居たって話をしたよね?」

「うん。最初に会った頃にしてくれたね」

「実は言ってなかったんだけど……前の世界では男だったんだよ」

「うん。もしかしたらそうかもって思っていた」

「ええ!?なんで!?」

「うーん。なんだろうね? なんとなくかな……」

「そっか……」

「だからさ、ちょうどバランス良いんじゃない? 私は女だけど男のフリしていて、サフランは男だけど女のフリしているわけでしょ」


 数分押し黙った後、私は口を開いた。


「明日はさ、ローリエがウェディングドレスを着て、私がタキシードを着ようか?」

「ええ、みんなびっくりしちゃうよ?」

「だって、一生に一度の結婚式だよ? ローリエもウェディングドレスを着たいでしょ?」

「いいよいいよ。サフランが着なよ。それともウェディングドレス着るの嫌?」

「いや、嫌じゃないけど」


 そうなのである。

 私はこの世界に来て、サフランという少女の肉体で、ずっと女性を演じてきた。

 その結果、今や気持ちも女性になりかけている。つまりウェディングドレスを着ることを楽しみにしている自分がいる。


「ウェディングドレスも良いけど、私はタキシードを着て、ウェディングドレスを着たサフランをエスコートするのも楽しみなんだ」


 もしかしたら私と同じようにローリエも男性として振る舞うことに気持ちが馴染んでいるのかもしれない。


「わかった。明日は私がウェディングドレスを着て、タキシードを着たローリエに手を引いてもらうよ」

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