第48話 婚約

「サフランとローリエ、おまえたちはまだ結婚式は挙げていないのよな?」


 私は耳を疑った。このおっさん、いきなり何を言い出すんだ。


「いえ、まだです。そもそもまだ正式に婚約もしていないですし……。あの、なぜそんな話を?」

「うむ。ふたりは非常に仲が良く、恋仲であると報告を受けておる」


 そう言って、コリアンダー大王はチラリとナツメグさんのほうを見た。

 私がナツメグさんを見ると、舌を出してウインクしている。犯人はおまえかー!


「まだ婚約していないのであれば、今してはどうだ?」


 そんな急に無茶苦茶な。


「大王様、少しこの場をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「うんむ。良いぞ良いぞ。はっはっは」


 ローリエがそんなことを言って、私のほうを向いた。


「サフラン、突然でごめんね。ボクと結婚してくれないかな」


 ええー、ローリエまで!?

 ローリエが良いなら私は良いけどさ。


「私は良いんだけど、ローリエは本当にそれでいいの?」

「うん。サフランと一緒に生きていきたいんだ」

「わかった。ふつつかものですが、よろしくお願いします」


 誰ともなく拍手が湧きおこる。見れば、コリアンダー大王も拍手してくれている。


「よし。では、サフランにローリエ。明日、大聖堂での挙式を許可する。大臣よ、バジル大司教に連絡を頼む」

「承知いたしました」

「それとサフランとローリエに指輪を作らねばな。ナツメグよ、サフランとローリエを連れて、指輪屋に行くように。サイズ調整は明日の式に間に合わせるように言いなさい」

「かしこまりました」

「これが余からの贈り物だ。気に入ってもらえたかな?」

「ありがとうございます。この上なく身に余る光栄です」


 ローリエが答えてくれた。私は頭が真っ白で何と答えればよいかも全く思い浮かばなかった。


 *****


 コリアンダー大王との謁見が終わった私たちは、ナツメグさんと一緒に指輪屋に来た。

 ローリエと指輪を選ぶ。

 異世界の結婚指輪は魔道具と相まって他種多様だ。


 もう片方の指輪をしている者と交信できる指輪。

 もう片方の指輪をしている者と視覚を共有できる指輪。

 もう片方の指輪の場所に物体を転送できる指輪。

 もう片方の指輪をしている者の元へ瞬間移動できる指輪。


 もちろん時間や回数に制限があり、使い切るとお店にある専用の機械で魔力をチャージする必要がある。


 私とローリエは、もう片方の指輪をしている者と交信しつつ、1回だけ相手の元に瞬間移動できる指輪を選んだ。

 指のサイズを測って指輪を調整してもらう。

 さっそく使ってみたかったが、明日の結婚式に大聖堂でお渡しということになった。

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