第47話 ナツメグ

「なんでナツメグさんがここにいるんですか!?」

「こら、サフラン。場をわきまえなさい」

「ハッハッハ、良い良い。スターアニスよ、サフランにナツメグのことを黙っていたのか?」

「それは当然のことですわ、お父上」

「それもそうか。サフランよ、ナツメグは我が国の諜報員である。商人を装って各地や、場合によっては国外の情報を集めているのだ。そなたの噂を聞き、我が国にとって危険となりえる人物なのか、助けとなりえる人物なのか見極めるために近づいたのだ。騙すようなことをして悪かったが、これも国のためと思って許してほしい」

「そうだったんですね」

「あと、このことはカルダモン伯爵も知らない。皆には秘密にしておいてほしい」

「わかりました。黙っておきます」

「さて、ではハバネロ帝国がどのような国なのか、ナツメグに説明してもらおうかな」

「はい。サフランさん、少し長くなりますが私から説明しますね」

「お願いします」


 ナツメグさんの教えてくれたことは次のような内容だった。


 ハバネロ帝国は、皇帝ハバネロが治める独裁国家である。

 皇帝ハバネロは、長い労働使役や高い税金など、ひどい政治を行っており、国民からも暴君と呼ばれている。

 領地拡大を狙っており、ハーブス・パイス王国にも仕掛けてきている。先の魔物の強襲もその一環だった。


「そしていよいよ本格的に我が国への侵攻を開始しようとしてしておる。我々はこの苦難に対して実力をもって排除しなければならん」

「なるほど、わかりました。それで私はどうすれば良いのでしょうか?」

明後日りょうごにち、我が国の精鋭部隊が王都をつ。我が国とハバネロ帝国の中間にあたるマッサマン平原が決戦の地になると考えておる。それに従軍してほしい」


 明後日あさって……それはまた急な話だ。

 私はローリエを見た。ローリエが真剣な眼差しで頷く。たぶんローリエは一緒に付いてきてくれるだろう。

 今度はローズマリー先生とパセリたちを見る。ローズマリー先生は何かを考えているようだ。パセリは横に首を振っている。


「私以外の者もでしょうか?」

「余がお願いしたいのは、そなたサフランのみであるが、他の者も我が軍に参列してくれるというのであれば歓迎する」

「わかりました。少なくとも私は従軍します。ガーリック将軍、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく頼む。優秀な冒険者が我が軍に味方してくれれば鬼に金棒だ」


 これで話が終わったかな?と思ったところにコリアンダー大王が新しい話を振ってきた。


「よし、この話はここまでだ。ときにサフランとローリエ、おまえたちはまだ結婚式は挙げていないのよな?」


 ええー。この人、いきなり何を言い出すんだ!

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