第44話 ネメア3
私が目覚めると、泣きながら私を見つめるローリエがいた。
そして、後ろにはローズマリー先生が立っている。
「サフラン!」
ローリエが私を抱きしめる。
「え? なんでローリエがここにいるの?」
「話は後です。一旦撤退しましょう」
私は周囲の状況を確認した。ネメアはまだ生きており、あちらこちらに雷を落としている。
「ローズマリー先生とローリエは一旦逃げてください。あともう少しでネメアを倒せます。私がやります」
「一人では危ない。一緒に一旦引こう」
「逃げないなら、雷に打たれないようにそこで伏せていてください!」
そう言って私はネメアに向かって猛進した。
『
ネメアに到達すると、錫杖でネメアのみぞおちに渾身の突きを放つ。
ネメアが呻いて、顔を下げてくる。
続いて私はネメアの眉間に全力で錫杖の突きを入れた。
私にローズマリー先生ほどの跳躍力があれば、最初から狙えただろう。
眉間に錫杖がめりこみ、ネメアが苦しむ。
むやみやたらと落とされていた雷が止んだ。
苦しんでいたネメアが沈黙し、動かなくなる。
次第に晴れ間が現れ、ネメア一帯を覆っていた雨雲がなくなった。
雨上がりの晴れた天気になる。
「やった……か?」
「サフラン、ありがとうございました」
「すごいよ。さすがサフラン!」
後ろからローズマリー先生とローリエがやってくる。
確かにネメアは絶命したようだ。
「さすがに疲れました」
「ふふ。お疲れさまでした」
「ボク、みんなを呼んでくるよ」
そう言ってローリエがスターアニス王女たちのいる馬車に向かう。
私とローズマリー先生は小岩に座って少し休憩した後、ギルドに報告するためネメアの討伐部位を切り離した。
「とんでもない魔物がいるものなんですね」
『
けれども無敵じゃない。
それを骨身にしみて理解した一戦だった。
*****
私たちは、スターアニス王女たちと合流し、次の町に向かった。
次の町でネメアの討伐をギルドに報告した。
何も素材を持ち帰ってこなかったにも関わらず、討伐報酬はものすごい高値となった。ネメアは、丈夫な表皮、硬い爪、加工しやすい骨、身のしまった肉など、あらゆる部位が素材や食材となるらしい。すぐにも素材回収のクエストが貼りだされた。天災級の魔物を倒したことに対する報酬だけでなく、それらの素材や食材を調達可能にしたことに対する報酬も含まれているそうだ。
私は報酬をみんなで等分することを主張したが、パセリたち3人は要らないからローズマリー先生と分けてくれと言うし、ローズマリー先生はサフラン一人で倒したようなものだから要らないと言う。結局、2割をパセリたち3人に、3割をローズマリー先生に、5割を私とローリエでもらうことにした。
こうして私たちは旅を続けた。
残る旅路では大きな問題もなく王都に到着することができた。
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