第45話 王都

「広い! しかもこんなに賑やかだなんて!」


 私たちは王都に到着した。

 入城手続きを行い城門をくぐると、多くの馬車が行きかい、商店が立ち並ぶ街並みに目を奪われた。

 ちなみにスターアニス王女が最初から名乗っていれば、面倒な入城手続きはパスできたにも関わらず、お忍びを理由にスターアニス王女が名乗ることを遠慮したため、私たちは一般人と同じ入城手続きを行った。最後にスターアニス王女が入城手続きを取ったときの門番の驚きようには笑ってしまった。


 いろいろ街を見て回りたいところだけれども、まずはスターアニス王女を王宮に届ける必要がある。そのまま馬車で王宮に向かった。

 王宮の近くに荘厳な大聖堂があった。聞けば、この国でもっとも大きい教会らしい。当然そこにいる大司教はこの国における教団のトップなのだそうだ。


 王宮に到着すると、衛兵がスターアニス王女を出迎える。


「皆さん、ここまで本当にありがとうございました。父にも報告して参りますので、少し応接間でお待ちいただけますか」


 そう言って、スターアニス王女は王宮の中に消える。

 私たちは衛兵の案内で馬車を所定の位置に停め、応接間に移動した。

 応接間に移動すると、ちょうどスターアニス王女が入ってきた。


「父が皆さんにお会いしたいと申しております。こちらに来ていただけます?」


 スターアニス王女の父ということはコリアンダー大王のことだろう。

 カルダモン伯爵から紹介状をもらってはいるが、まさか王都到着早々に会うことになるとは思っていなかった。

 私は緊張で手に汗をかく。


 謁見用の広間に案内されると、数段高い位置に置いてある王座に男が座っていた。三十代後半ぐらいだろうか。ギラリとした目をしている。あれがコリアンダー大王なのだろう。

 コリアンダー大王の隣にはスターアニス王女が立っている。

 また、謁見の間の両脇には大臣や将軍のような人たちが並んでいた。


 私たちは、一列目に私とローリエとローズマリー先生、二列目にパセリとジンジャーとマスタードと並んだ。

 ローズマリー先生の作法を横目で見ながら、真似してお辞儀をした。


「そのほうたちがスターアニスを守ってここまで付き添ってくれたのか。礼を言う」


 何と返事すれば良いのかわからず、ただただハハーッと礼をしていたら、ローズマリー先生が代わりに答えてくれた。


「おそれいります。大王様からのねぎらいのお言葉、光栄でございます」

「うむうむ。その方が『神速』のローズマリーだな。噂は王都でも聞いておる。頼もしいな。……ということは隣にいるそちがサフランと申す女子おなごだな?」


 え?え? 急に私に話を振られたよ!?

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