第42話 ネメア

 私、ローリエ、ローズマリー先生、ジンジャー、マスタードの5人はネメアに近づいた。近づくと、さらにその巨大さがわかる。


 50mほどの距離まで詰めた。なぜかネメアの近くは天気が悪く、暗い雰囲気に今にも雨が降り出しそうだった。

 グルルルル!とこちらを睨みつけ唸ってくるが、動く気配がない。


「一発、撃ち込んでみようか」


 そう言って、ジンジャーがクロスボウを使ってネメアに向かって矢を射る。

 ネメアは動かないが、ガウと小さく咆哮をあげると、雷が落ち、矢が燃え尽きて落ちた。


「どうやら『不動緊縛ふどうきんばく』は効いていそうですね。……って危ない!回避!」


 ローズマリー先生が叫んだが、一足遅かった。

 さらにネメアが咆哮をあげると、雷が私たちめがけて落ちてきていた。


「ぐわ!」

「わあ!」


 みんな咄嗟に回避しようとするも間に合わず、雷を一身に受け、吹き飛ばされた。

 みんな地べたに伏して倒れている。

 私は朦朧としながら、みんなに『治癒ヒール』をかけた。


「ぐうう……。『治癒ヒール』……」

「ふう、助かった」


治癒ヒール』で元に戻ったみんなが立ち上がるが、ネメアが再び咆哮をあげ雷を打ってくる。


「うわあ!」


 私も含めて、ローズマリー先生以外はまた雷に打たれた。

 私は即座にまた『治癒ヒール』をかける。


「全員一旦下がれ!」


 ローズマリー先生は『加速クイック』を使って、雷を回避している。

 しかしいつもは常に丁寧語を崩さないローズマリー先生もこの状況では余裕がないようだ。


 ネメアから100mほど距離をとると、ネメア周辺の異様な天候もなく、普通に晴れている。ここまでは雷も落ちてこないようだ。


「どうする。これじゃ近寄れないよ」

「私とサフランだけでいきましょう。他の3人はここで待っていてください」

「え、先生は雷を回避できるかもしれませんが、私は無理ですよ」

「サフランは『治癒ヒール』があるでしょう。雷に打たれる都度、自分に使用してください」

「うはぁ、特攻だ……。わかりました」


「ボクも『隠密ハイド』を使いながら近づきます」

「いや、ネメアの表皮は非常に硬いので、ローリエが近づいてもダメージは与えられないはずです」

「そうなんですね……」


「僕はここからクロスボウでネメアを撃ち続けるよ。雷で撃ち落とされるとしても何かしらの牽制になるでしょ」

「そうですね。それはお願いします」


「今回は俺のバスターソードは役に立たないか……。ローリエとみんなを応援するしかないな」

「マスタードさん、そうしよう」


 ローリエがマスタードの肩を叩く。


「では、先生。いきますよ……」

「ええ。サフランさん、がんばりましょう」


 そうして、私とローズマリー先生は、再度ネメアに向かって、暗雲立ち込める領域に足を踏み入れた。

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