第41話 王都へ

 翌朝、7人で宿を出発し、まずは馬車屋に向かった。

 レンタルではなく購入だ。


 いくつも種類がある中で、スターアニス王女が選んだのは「キャラバン」と呼ばれる幌馬車だった。内装も凝っており、この世界におけるキャンピングカーなのではないかと思わせる作りだ。


 御者はパセリとローズマリー先生が交代でやってくれることになった。

 最初はパセリが御者、ジンジャーが助手ということで、この2人が御者台に座っている。


 幌の中で私はスターアニス王女に聞いた。


「そういえば、どうして私たちに指名依頼を出したんですか? 他にも優秀な冒険者はたくさんいると思うんですけど」

「ナツメグさんからお二人のことを聞いたんです。優秀でお人柄も良く信頼のおける方であると。一緒に旅する仲間ですので、やはり信頼が大事じゃないですか」

「ああ、なるほど……。そういえば、ナツメグさんとはすぐ別れたんですか?」

「あの日は一緒の宿に泊まって、翌朝別れましたよ。買い付けのために次の町に行くんだと言っていました」

「そうですか。もう会うこともないのかなー」

「ふふ。行き先が同じならバッタリ会うかもしれませんよ」

「そうですね。また会えたらいいなー」


 *****


 旅は順調に進んでいた。

 出くわす魔物や盗賊は雑魚ばかり。余裕で倒して進むことができた。


 そうして出発してから数日後、立ち寄った町で不穏な噂を耳にした。

 次の町に行くためには、山と山に挟まれた谷間の道を進んでいくしか道がないのだが、そこに異常な魔物がいるというのだ。

 ギルドでも特別な懸賞金付きのクエストが貼りだされており、町の人々はかなり困っているようだった。


「どんな魔物なんでしょうね?」


 そうして次の町を目指して谷間の道を進んでいると、ローリエが緊張した声をあげた。


「たしかにこの先にとても強そうな魔物がいる。1匹しかいないけど、今まで遭遇した魔物の中で一番強いかもしれない」

「みなさん、前を見てもらえますか。もう魔物が見えています。あれはネメアですね」


 御者台にいたローズマリー先生が声をかけて馬車をとめた。

 みんなが馬車から降りて、前方に見える魔物を見た。


「大きい……」


 まだ1kmほどは先のはずなのに、その体躯が見える。体長は10mをゆうに超えているのではないだろうか。

 ローズマリー先生がネメアと言った魔物は、大きなライオンのような魔物だった。


「サフラン、ここからネメアに向かって『不動緊縛ふどうきんばく』は使えますか?」

「やってみます」


 ローズマリー先生に言われて、私は錫杖をシャン!と鳴らした。


「どうです? 効いた感覚はありますか?」

「えーと……、いつも効いた感覚というのはなくて、相手が動けなくなったことで確認していたので、わかりません」

「そうですか。では、パセリさんとスターアニスはこのまま馬車で待機して、残り5人でネメアに近づきましょう」

「パセリ、スターアニスを頼んだよ!」

「おう、こっちは任せとけ!」

「みなさん、お気をつけて」


 私たち5人はネメアに近づいた。

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