第38話 C級講習2日目4

 馬車の幌を上げて中には私たちと同い年ぐらいの女の子が乗っていた。

 猿轡さるぐつわをされており、体を縄で縛られている。衣服は破れたりしていないので乱暴はされていなさそうだ。


「これは仲間じゃなくて、被害者かな?」

「そうだね。まずは縄を解こう」


 私とローリエで女の子の猿轡と縄を外した。


「危ないところを助けていただいて、ありがとうございました」

「私はサフラン、こっちがローリエ。あなたは?」

「えっと……、スターアニスと申します」

「良い名前ね。ひどいことはされていない?」

「……はい、私以外の者は皆殺されてしまいましたが、私は無事でした」

「え!? ……あいつら、そんなことを」


 スターアニスは俯いて、今にも泣きだしそうな顔をしている。

 ナツメグさんが口を開いた。


「サフランさん、私がこの方を見ていますので、盗賊の捕縛をお願いできますか?」

「そうですね。すぐ終わらせますので、よろしくお願いします」


 そうして、私とローリエは馬車を出て、盗賊たちを縄で縛り上げた。

 いまごろになってナツメグさんの馬車の積み荷から、御者の人が車輪を持って出てきた。状況が飲み込めず、ぽかーんとしていたので、経緯を説明するとビビっていた。


 盗賊たちを縛り終えて、スターアニスさんとナツメグさんのところに戻ると、スターアニスさんは平静を取り戻していた。さすがナツメグさんはコミュ力が高い。

 2人が馬車から降りると、ナツメグさんが提案してきた。


「私たちの馬車で隣町まで連れて行きたいと思います。よろしいですか?」

「もちろんです。こちらの馬車はどうしましょう? 捕まえた4人組の男たちも」

「それは私が対処しましょう」


 後ろから声がしたので振り返ると、ローズマリー先生がいた。


「先生! どこに行ってたんですか! 大変だったんですよ!」

「ええ、後ろから隠れてちゃんと見ていましたよ。さすがでしたね。何かあれば手伝おうと思いましたが、その必要もなかったようでしたので」

「ええ……、こっそり見ていたんですか……」


 そういうわけで、車輪が壊れた馬車の車輪を取り換え、縄で縛り上げた男たちを幌の中に詰め込み、ローズマリー先生が御者台に乗った。


「私は後ろからついていきます。ナツメグさんの馬車を先に出してもらえますか」

「了解です。スターアニスさん、こちらへ」

「ありがとう。ナツメグさん」


 スターアニスさんは、私とナツメグさんに挟まれる形で間に座った。

 この場所が一番安心できるよね。


 こうして、私たちは隣町まで到着した。

 4人組の盗賊は隣町のギルドに突き出し、スターアニスさんの面倒はナツメグさんが見てくれるということだったので、お任せすることにした。


「いろいろ大変だったけど助かりました。ありがとうございました」

「いえいえ。無事に依頼を達成できて良かったです」

「これでC級に上がるんですよね? もしかしたら、指名依頼させてもらうかもしれませんよ」

「ええ? 本当ですか? その時はよろしくお願いしますね」


 本気なのか冗談なのかわからないけど、ナツメグさんが嬉しいことを言ってくれる。

 私たちはナツメグさんとスターアニスさんと別れた。


「それでは私たちの街に帰りましょうか。2人ともC級に昇級ですね」

「ボクもC級に上がれるんですか? サフランがいなかったら、たぶん対処できなかったんじゃないかと思いますけど……」


 ローズマリー先生のC級昇級宣言に喜びつつも、ローリエは疑問を投げかける。


「一般的なC級冒険者としての水準には十分到達しているので問題ないですよ。どんなに強い冒険者でも人質を取られると、なかなか厳しいものです」


 私たちが街に帰ると、既にパセリたちも帰ってきていた。

 無事にC級に昇級できたらしい。

 そして私たちも無事にC級に昇級することができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る