第37話 C級講習2日目3

「動くな! こいつらがどうなっても良いのか!」


 ナツメグさんとローリエが縛り上げられて、首元には剣を突きつけられている。


「ぐっ、卑怯な」


 私が殴り倒した男は気絶しているが、指示を出しているリーダ格の男が一人と、ナツメグさんとローリエを縛り上げた男がそれぞれ一人ずつ、合計3人が残っている。


「よーし、そのままじっとしてろよ」


 ローリエを縛り上げた男が、こちらに近づいてくる。ローリエはナツメグさんと一緒に、もう一人の男に縄を捕まれている。


 そういえばローズマリー先生はどうしたんだろう?と思って、後ろを振り向いてみるが姿が見えない。

 もしかしてこいつらの仲間に捕まってしまったのか。いや、ローズマリー先生が捕まるとも思えない。私たちだけで対処しろということで隠れている可能性もある。

 いずれにしても、この状況を自分の力で解決しなければならないようだ。


 ナツメグさんの前では使いたくなかったが、私は『不動緊縛ふどうきんばく』を使うことにした。

 もしかしたら何をしたのかわからないかもしれないし、バレたとしても黙っておいてもらえば良いだろう。信用できそうな人だ。

 私はなるべく自然を装って錫杖を鳴らす。


 シャン!


「おわ!」


 急に身体が動かなくなって転びそうになったせいか、私に向かって近づいてきていた男が声を上げて立ち止まった。


「む? ぐっ、体が動かん。貴様、何をした!」


「おや? 体が動かなくなった? 悪いことしているから天罰が下ったんじゃない?」


 白々しく答えながら、ローリエが縛られている縄を切る。続けて、ナツメグさんが縛られている縄も切った。


「さて、おとなしく捕まってもらいましょうか」

「待ってサフラン、まだ馬車の中に一人だれかいる」

「こいつらの仲間かな?」

「わかんない。そうかもしれない」


 私とローリエは車輪の壊れた馬車に近づく。ナツメグさんも後ろからついてくる。

 慎重に馬車のほろをめくりあげ、中を覗いた。


「あ!」


 後ろから一緒に中を覗いたナツメグさんが声をあげる。

 中には私たちと同い年ぐらいの女の子が乗っていた。

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