第36話 C級講習2日目2

「サフラン、正面からゴブリンが8体くるよ」

「馬車を止めてもらえますか。ローリエ、私がやっつけてくるからローリエはここで見張りを続けてて」

「わかった」


 私は馬車を降りてゴブリンがいる方角へ走る。

 道を曲がったところにゴブリンがいた。

 ちらっと後ろを見て馬車が見えないことを確認し、『不動緊縛ふどうきんばく』を使う。

 身動きの取れなくなったゴブリンを一体ずつ錫杖で殴り倒し、死体を道の脇の見えないところに隠した。

 馬車まで戻る。


「対処しましたので、行きましょう」

「8体ものゴブリンを一人で倒したんですか? 治癒職ヒーラーなんですよね?」

「え、ええまあ。これぐあいなら……」

「優秀なんですね。頼もしいです」


 ナツメグさんに驚かれてしまった。怪しまれているわけでは良しとしよう。護衛される側からしてみれば強いに越したことはないもんね。


 ローリエが『索敵サーチ』を使っているとはいえ、魔物が出たばかりということもあって、私も目視で回りを注意することにした。少し空気が張り詰めている。


 少し進んでいくと、またローリエの『索敵サーチ』に引っかかった。


「サフラン、この先に人間が5人ほどいる。止まっているみたいだね」

「盗賊の待ち伏せ? それとも旅人が休憩しているのかな?」

「わかんない。どっちだろう」


 近づいてみると、車輪が一つ壊れた馬車が道から外れて止まっていた。


「旅人かな。脱輪して困っているようだね」


 近づいてみると4人の男たちが馬車の外で何やら話していた。

 ナツメグさんが話しかける。


「どうされました?」

「見ての通り、車輪が壊れてしまって、立ち往生しているんだよ。予備の車輪を持っているようなら売ってもらえないだろうか」

「予備の車輪は積んでいなかったんですか?」

「最初は積んでいたんだが、先日使ってしまってね。もう無いんだよ」

「なるほど。それは大変ですね。さすがに差し上げるわけにはいきませんが、次の町で買い直す程度の費用でお売りしましょうか?」

「おお、それは助かる」


 4人の男のうち1人が、こちらの馬車のまわりを見て回っている。なんとなく不躾な感じがして嫌悪感を抱いた。


 ナツメグさんの指示で、御者の人が馬車の荷台に予備の車輪を取りに行ったとき、突如4人の男のうちの1人が叫んだ。


「よし、取り押さえろ!」


 残りの3人がサッと動き、ナツメグさん、私、ローリエを拘束する。「あ!」と声を上げるが、あまりもの手際の良さに2人とも縄で縛り上げられてしまった。

 私は咄嗟に、縄で縛り上げようとする男を錫杖で殴り倒した。


「動くな! こいつらがどうなっても良いのか!」


 ナツメグさんとローリエの首元に剣が添えられている。

 人質をとられては、動きが取れない。

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