第35話 C級講習2日目

「おはようございます。今日は隣町まで『護衛』の実習です」


 聞けばローズマリー先生などの講師が護衛対象役を務めるのではなく、ギルドに護衛依頼のあった本当の行商人が護衛対象となるらしい。講師も一緒に同行することと、報酬額を少し相場より落としていることで合意できているらしい。


「商人のナツメグです。宜しくお願いします」


 商人と聞いて小太りのおじさんをイメージしていたが、二十代前半のように見える女性だった。

 行商人は4組おり、それぞれに1パーティずつ割り当てられている。私とローリエはナツメグさんを護衛することになった。

 そしてD級講習のときと同様に今回もローズマリー先生が同行してくれることになった。


「ナツメグさん、今日は宜しくお願いします。サフランにローリエ、D級講習のときと同じように私は基本的には手を出しません。2人で頑張ってください」

「わかりました! ナツメグさん、精一杯やりますので宜しくお願いします」

「ええ、頼りにしていますね」


 ナツメグさんが微笑む。商人というだけあって笑顔が眩しい。こんな人から勧められたら男はすぐ買っちゃいそうだ。


 移動は馬車だ。御者の左にローリエ、ローリエの後ろにナツメグさん、ナツメグさんの右側……つまり御者の後ろに私が座る。

 ローズマリー先生は後ろから馬に跨って付いてくる。


「サフラン、移動中は私が『索敵サーチ』を使うから」

「わかった。よろしくね、ローリエ」


 そうして街を出発して隣町に向かい始めた。

 ちなみにパセリたち他のパーティは別の町に行くなので、この道を進むのは私たちだけだ。


「ナツメグさんは何を取り扱ってるんですか?」


 移動だけで暇なので、私は隣に座っているナツメグさんに話しかけた。


「お薬ですね。各地で買い集めた薬を王都で売るというのが私の商売です。親が王都で薬屋を営んでいるので」

「ええ! それじゃお家は王都なんですね。王都って、どんなところなんですか?」

「そうですね。この辺の家は木の家が主流ですが王都は石造りが多いですね。街全体がもっともっと広くて、お店もたくさんあります」

「へー、都会なんですね」

「昔は貧しい人たちが住むスラムなんかもありましたが、コリアンダー大王の代になってて、みんなが豊かになりそういう場所もなくなりましたね」


 コリアンダー大王というのはなかなか賢君らしい。


「サフラン、正面からゴブリンが8体くるよ」


 ローリエが魔物の接近を教えてくれた。

 さっそく忙しくなりそうだ。

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