第34話 C級講習1日目3

 四人パーティと私たちとの模擬戦が始まった。

 四人パーティは、魔法職ウィザードが1人と、パセリさんと同じ盾士が1人、槍士が1人、剣士が1人という構成だった。


 魔法職ウィザード以外の3人が、こちらめがけて攻め込んでくる。

 私とローリエは、まず2人で人形を守りつつ相手の人数を減らすことにした。

 幸い治癒職ヒーラーがいないので、一度ノックアウトさせればしばらくは復活できないだろう。


 ローリエを人形の前に残し、私が1人突っ込む。3人が人形に到達する前に最低でも1人は減らさないと。


 私は強引に槍士に向かって錫杖を振り回した。槍士は槍で受け止めるが、そのまま私の力に押し込まれ、吹っ飛んでいく。壁にぶつかって、動かなくなった。


 剣士が別の方角から人形に向かうがローリエが対峙してくれている。


 私は盾士の前に立ち塞がった。

 盾士が盾を構えたまま、私に突撃してくる。錫杖を横に持ち、盾を押し止める。そのまま逆に押し返して前進する。盾士は踏ん張りきれずに私が押した分だけ後ずさった。


 その時、盾士の後方に控えていた魔法職ウィザードから火の玉ファイヤボールが浮かびあがるのが見えた。

 一瞬、盾士を援護するために私を狙うものかと思ったが、すぐに直接人形を狙うものだと悟った。

 私は盾士を蹴飛ばし、踵を返して人形の元に戻った。人形を庇うように立ち、飛んできた火の玉を錫杖で叩き落とすが、いくつかは叩き落とせせず、人形の前に立つ私に着弾した。


「ぐっ……『治癒ヒール』」


 体に熱い痛みが走るが、すぐに『治癒ヒール』をかける。

 私は改めて状況を確認した。

 魔法職ウィザードが続けて火の玉ファイヤボールを撃とうと準備している。

 盾士が起き上がろうとしているがまだ少し時間がかかりそうだ。

 ローリエと剣士は互角の戦いをしている。


 私はローリエと対峙している剣士に、錫杖で突きを打ち出した。

 咄嗟とっさのことで剣士も対応しきれず、突き出した錫杖は剣士にクリーンヒットし、剣士は訓練場の壁まで吹っ飛んだ。


「私守るからローリエ攻めて!」


 急いでローリエに声をかけて、私は魔法職ウィザードから撃ち出された火の玉ファイヤボールを先程と同じようにさばいた。やはり捌ききれずに体に着弾するが即座に『治癒ヒール』をかけて治す。


「『盾撃シールドバッシュ』!」


 今度は体勢を立て直した盾士がスキルを使って攻撃してきた。

 錫杖を構えて受け止める。今度はそのまま押し返すのではなく、人形に当たらないように斜め後ろに、勢いを受け流した。

 盾士は勢い余って、地面に手をつく。


 カーン!


 相手陣地から金属が木を打つ音が聞こえた。

 ローリエが魔法職ウィザードを掻い潜って、木の人形にショートソードを当てた。


「よっしゃ!」


 こうして、私たちは四人組のバーティにも勝つことができた。


 その後、パセリたちとも戦って、私たちは3戦3勝、パセリたちは3戦2勝という結果に終わった。


「まさか二人組のペアが3勝とはなぁ……」


 パセリがぼやく。私も意外だが、ひとつひとつ勝ちを積み重ねた結果だろう。 


「皆さん、今日はお疲れ様でした。警護が通常の戦闘とは違うものであるということがわかってもらえたと思います。」


 ローズマリー先生が今日の講習を締めくくる。たしかに単に戦って勝てば良いというだけではない難しさがあった。


「さて、明日は実際に隣町まで実習を行います。朝は遅れないように集合してくださいね。それでは解散しましょう」


 こうしてC級講習1日目が終了した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る