第33話 C級講習1日目2

「では、午後は模擬戦をします。4パーティで総当たり戦をしましょう」


 そう言って、ローズマリー先生は黒板に総当たり戦の表を書いた。

 4チームで総当たり戦をするので、1チーム3回ずつ、計6回模擬線を行うことになる。


「サフラン、どう戦う?」

「私が正面から行くから、ローリエは『隠密ハイド』で後ろから撹乱しつつ攻撃するのはどうかな?」

「いいね。そうしよう」


 そこにローズマリー先生が口を開いた。


「はいはい、最後まで話を聞いてください。訓練場で本当に斬り合うわけにはいきません。ここに木の人形があります。それぞれのチームは人形を守ってください。相手の人形に攻撃を当てた方を勝ちとしましょう」


 見ると黒板の横に、人と同じぐらいの大きさの木の人形がふたつ置いてあった。昼休み中に持ってきていたようだ。


 みんながザワつく。どういう役割分担でいくのか話し合っているようだ。

 午前中の講義では、護衛対象の近くに一人配置して、それ以外は敵を追い払うのがセオリーだった。


「ふたりしかいないのは、かなりハンデだねー。どうしようか」

「『不動緊縛ふどうきんばく』を使っちゃう?」

「いや、それはだめだよ。……うーん、私が守りに入るから、ローリエが相手の人形を攻撃しに行って」

「うん、わかった。それでいこう」


 私たちの一回戦目は、初めて会った3人パーティだ。治癒職ヒーラーが1人と剣士が2人だ。


「では、はじめ!」


 治癒職ヒーラーが人形を守り、剣士2人が攻めてきた。

 一人が私に斬りかかってくる。錫杖で受け止めるが、その間にもう一人が人形を攻撃しようと迫ってくる。

 強引に錫杖を横に振って、人形を攻撃してきた剣士を払う。私に払われた剣士は訓練場の端にすっ飛んでいった。

 しかし同時に私の腕に激痛が走る。


「あ!」


 模擬戦なのに怪我をさせてしまったという表情をして私に剣を振るってきていた剣士が一瞬固まる。

 私は自分に『治癒ヒール』をかけながら、すかさず錫杖で剣士を突いた。剣士が数歩後退りうずくまる。


 カーン!


 相手陣地から金属が木を打つ音が聞こえる。

 音がした方を向くと、ローリエが木の人形にショートソードを当てたところだった。

 相手の治癒職ヒーラーは、ローリエの隠密ハイドによって、全く対処できなかったようだ。訓練場の端に飛ばされた剣士に『治癒ヒール』をかけているところだった。


「はい、ローリエチームの勝ち! お疲れさまでした」


 私は近くでうずくまっている剣士に『治癒ヒール』をかけてあげた。

 ローリエが笑顔で戻ってきて私を抱きしめる。


「やったやった!」

「うまくいったね」


 次は、パセリたちと四人組のパーティが戦った。

 人数では劣るパセリたちだったが、なんと3人とも人形の近くに陣取る。開始早々、ジンジャーが『遠撃ちロングショット』を相手の人形に撃ち当て、あっけなく勝敗が決まってしまった。


「パセリチームの勝ち!……でも、これはあまり演習になりませんでしたね」


 四人パーティも少し納得いかない顔をしている。


 次はその四人パーティと私たちだ。

 人数が2倍差で、ジンジャーのような遠隔攻撃も持ってないし、超不利じゃない!?

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