第32話 C級講習1日目

「次のC級講習の講師と、C級試験の試験官になったから、ふたりとも申し込んでおいてくださいね」


 翌日、ローズマリー先生からそのように言われ、私たちはさっそくギルドの受付で、C級講習を申し込んだ。


 数日後、D級講習のときと同様に訓練場にC級講習の受講者が集まった。


「あれ? サフランにローリエじゃないか。また一緒になるなんて奇遇だな」


 声をかけてきたのはパセリたちだった。


「お!一昨日ぶりかな? 3人ともC級講習を受けるの?」

「ああ、先日の魔物との戦いで、そろそろC級に上がれるんじゃないかと自信が湧いてね」

「そっか。お互い頑張りましょう」


 今回のC級講習は、私とローリエ、パセリ、ジンジャー、マスタードの5人に、3人パーティと4人パーティがいて、総勢12人だ。

 そこに、ローズマリー先生が訓練場に入ってきた。


「おはようございます。皆さん、C級講習の受講者ですね。では、こちらに集まってください」


 ローズマリー先生の前に、それぞれパーティごとに4つの塊ができる。


「C級講習は2日間です。皆さんご存じと思いますが、C級に上がると『護衛』依頼が受けられるようになります。今日の午前中は『護衛』に関する基礎知識を学びます。午後は模擬戦を行います。そして、明日は一日かけて隣町まで『護衛』の実習を行います。それではさっそく『護衛』の基礎知識から始めましょう」


 そうして、ローズマリー先生が黒板を使いながら、護衛について教えてくれる。腕を組んで聞いている人もいれば、一生懸命メモを取っている人もいる。

 ここでいう護衛とは、商人や貴族が街から街に移動する際に、魔物や盗賊から守るためのものだ。馬車で移動する際の乗車位置、魔物が現れた場合の対処の仕方、盗賊が現れれた場合の対処の仕方、護衛対象を守りながら魔物や盗賊を討伐するまたは追い払う時の注意点、などなど盛りだくさんだった。


「今まで魔物としか戦ったことがない方も多いと思いますが、C級になって護衛依頼を受けると、人と戦わなければならないことがでてきます。その点について十分に覚悟してください。では、お昼休憩にしましょう。午後からは模擬線を行います」


 私とローリエは、ギルドに併設の食堂でランチを食べることにした。


「久々に頭使うと疲れちゃうねー」

「そうだねー、体を動かすのとは疲れ方が違うよね」


 そこにパセリたちもやってきた。


「良かったら相席しても良いかな?」

「どうぞどうぞ。ちょっと詰めようか」


 丸テーブルに時計回りで、私、ローリエ、ジンジャー、マスタード、パセリが座った。

 右隣に座っているパセリに話しかける。


「普段はどんなことしているの?」

「南の森で『リクガメ』を狩っているよ」

「『リクガメ』? それって亀?」

「亀の魔物だよ。甲羅が高値で売れるんだ」

「へー。乱獲されて絶滅しないのかな?」

「魔物はどこからともなく湧いてくるものだから絶滅はしないよ。まあ、この街で『リクガメ』を狙う冒険者は多いけどね」

「そうなんだ。強いの?」

「獰猛さはないんだけど、ともかく硬くてね。ジンジャーの矢は通らないし、マスタードの両手剣も甲羅は通らない。2人が牽制している間に、俺が盾で守りながら近づいて、甲羅の隙間に剣を突き入れる感じかな」

「ははー。なるほどね」


 そのようなことを話しながら、ランチを食べた。

 さあ、午後は模擬線だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る