第31話 ハーブス・パイス王国
「サフランにローリエ、王都に行ってくれないか?」
カルダモン伯爵から急にそのような話題が挙がって、私とローリエはきょとんとした。
「知っての通り、我が国ハーブス・パイス王国は、隣国のハバネロ帝国と険悪な状態になっている。今回の一件もハバネロ帝国の差し金だ。そこでハーブス・パイス王国としてはハバネロ帝国への宣戦布告を考えている」
カルダモン伯爵は、ケーキスタンドに残っていたお菓子を私たちに勧めてくる。私はひとつ手にとって口にいれる。カヌレみたいなお菓子だ。
「サフラン、君の力はきっと王国のために役に立つ。私が推薦状を書くから、王都に行き、コリアンダー大王に会ってほしい。ローリエ、もちろん君も一緒だ」
コリアンダー大王。この国の国王であり、この国のトップらしい。
「おっと、すまない。次の予定があるもので、そろそろ時間だ。まず今回の褒賞金だ。これを受け取ってほしい」
そう言って、カルダモン伯爵が鞄から出したのは握りこぶしほどの大きさの袋だった。中を見ると全てこの国で最も高価な貨幣だった。
「それと君たちはもうC級に上がれるだろう。フェンネルには話をしてあるから、C級試験を受けなさい」
カルダモン伯爵は席を立って、話を続けた。
「最後に、さきほどの王都への話、考えておいてほしい。それではこれで失礼するよ。ああ、まだお菓子もお茶も残っているから、ゆっくり楽しんで行ってくれ」
そう言ってカルダモン伯爵は屋敷のほうに戻って行った。
「ローリエ……。どうしよう」
「うーん。とりあえずお菓子とお茶を楽しもうよ。……あれ? あれはローズマリー先生じゃない? ローズマリー先生ー!」
見ると、ローズマリー先生が屋敷から出てきたところだった。ローリエが声をあげて手を振ると、ローズマリー先生も気づいて、こちらに歩いてくる。
「あら、どうしたんですか。おふたりともこんなところで」
「お時間あります? ちょっと聞いてくださいよー」
「いいですよ。お邪魔して良いかしら?」
「どうぞどうぞ」
さっきまでカルダモン伯爵が座っていた席に、ローズマリー先生が座る。
カルダモン伯爵との話をローズマリー先生に話す。『
「なるほどね。それじゃ、次のC級講習とC級試験は私が受け持とうかしらね」
「え、またローズマリー先生に教われるんですか!よろしくお願いします!」
ローリエは喜んでいる。
「C級に上がると、護衛に関する依頼を受けられるようになるわ。王都に行く商人の護衛依頼を受けると、旅費が浮くわよ」
そうか。それがあるからカルダモン伯爵はC級に上がるように言ったのかな。
そうして、カルダモン伯爵邸のお庭でお茶とお菓子がなくなるまで、3人で楽しく歓談した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます