第28話 清算

 翌日、私たちは討伐報酬を清算するためにギルドを訪れた。


「ローリエさんとサフランさんですね。討伐部位を受けとりました。精算しますので、少しお待ちいただけますか」


 受付で手続きしていると、奥からギルド長のフェンネルさんが出てきた。


「おふたりとも、ちょっと中でお話できますか?」


 フェンネルさんに言われて、私たちはギルド長室に入る。


「どうぞ、腰かけてください。昨日はありがとうございました」

「いえ! とんでもないです!」

「あ!そういえば、フェンネルさんの剣技、見ました。びっくりしました。あんなことができるなんて」

「ああ、見られてしまいましたか。『遠隔操作リモコン』といって、触らずに物体を動かすスキルです。あれだけの数を同時にコントロールできるようになるまでは苦労しましたけどね」


 一息ついて、フェンネルさんが本題を切り出した。


「さて。実はカルダモン伯爵から、特に貢献した冒険者に褒賞金を出すという話がありまして、おふたりも対象にあがっています」

「え。そこまでの活躍はしていないはずですが……」


 もしかして『不動緊縛ふどうきんばく』がバレた?


「そうなんですか? 申し訳ないですが、私はおふたりとも頑張っていたという話をローズマリーから聞いた程度で、カルダモン伯爵がどういう基準で選定したのかまではわからないのですよ。まあ、褒賞金なんて滅多にもらえるものではないですから、もらえるものはもらっておいてはどうですか」

「わかりました。それでどうすれば良いでしょうか?」

「カルダモン伯爵のお屋敷に来るよう言われています。場所はここです」


 ギルド長室の壁に貼られていた街の地図で、カルダモン伯爵邸を指し示された。ちょうど街の中央から少し高台に行ったところだ。


「それではこの後すぐい行ってみます」

「ああ。気さくな人だから、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ」


 私たちはフェンネルさんにお礼を言って、ギルド長室を後にした。受付で討伐報酬を受け取り、さっそくカルダモン伯爵邸に向かう。


「ローリエ、スキルのことがバレたと思う?」

「うーん。でも丘の上から使ったんだし、普通に考えたらわからないと思うんだけどな」

「もしバレていたらどうしよう……。危険なスキルをもった奴だって監禁、投獄、下手したら処刑されたり……」

「バレていたらバレていたで開き直るしかないよ。別に悪いことしたわけじゃないんだし。もしそれで変なことされるようなら、それこそ全員、身動きとれなくするしかないよ」

「そうだね……。そうなったら、もうこの街には住めないね」

「もしそうなっても、私はサフランと一緒だから」


 ローリエが私の手を握ってくれる。

 私もギュッとローリエの手を握り返した。

 そうして手を繋いだまま、私たちはカルダモン伯爵邸に向かった。

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