第26話 浴場1
個室浴場に行く前に、ギルド隣の洗い場に寄って、武具や防具に付いた血糊を落とした。さすがにこのままじゃ入店拒否されそうだもんね。
それからお店に来てみたけれども、店構えを見る限り明らかに貴族向けのお店だった。
ローリエが対応してくれる。
「すみません。2人なのですが、入れますか?」
「冒険者の方? 共同浴場は今、ものすごい混みようですよ。入場制限はしていませんが、少し時間をおいて来られたほうが……」
「いえ、個室浴場のほうを利用したいのですが」
「個室ですか。失礼ですが、貴族の方でしょうか?」
「いえ、冒険者です。個室浴場は貴族専用なんでしょうか?」
「いえいえ、たしかに貴族の方専用のお部屋もご用意しておりますが、貴族でない方もご利用いただける個室浴場もございます。こちらが料金表になります」
ローリエは料金表を一瞥すると「では、このお部屋で」と部屋を指定して、お金を支払った。
「では、ごゆっくりお寛ぎください」
他の冒険者は共同浴場を利用しているのか、個室浴場はわりと空いているようだ。ローリエが本当は女の子だってことを知られないようにするために私たちは個室浴場を選んでいるが、確かに人目を気にせず体を流すだけなら共同浴場で十分だろう。
個室に入ると、休憩スペース、脱衣所、洗い場、湯船が揃っていた。個室と言いつつ、それなりに広い。カップル向けというよりパーティやファミリー向けという雰囲気だ。
ローリエが服を脱ぎ、胸に巻いている布地を外す。こうして見ると、体はキュッと引き締まりつつも、胸は結構あるんだなぁと思う。
そんなことを思いながら、ぼーと見ていたら、ローリエに急かされた。
「ほらほら、サフランも脱ぐよ」
「え、いいよ。自分で脱げるよ」
自分で脱げると言ったのに、ローリエが私の服を脱ぐのを手伝ってくれた。
洗い場の壁には大きな鏡が貼り付けてある。
改めて自分を見ると、全体的にはほっそりとしているが、出るべきところは出て、絞られているべきところは絞られており、筋張った感じもなく柔らかな感じになっている。
まさに男性が理想とするようなプロポーションだろう。
ローリエも出るべきところは出て、絞られているべきところは絞られているという点では私と同じだけれど、もう少し余計な贅肉を落としてスレンダーな感じだ。
たぶん女性が理想とするプロポーションというのはこんな感じなんだろう。
「洗ってあげる。そこに座って」
「ええー、自分で洗えるよ」
「いいからいいから」
少し強引に椅子に座らせられると、ローリエが頭から順に洗ってくれる。楽だー。気持ちいい。
「ありがとう。私もローリエを洗うよ」
「うん、お願いしようかな」
お返しに今度は私がローリエを洗ってあげる。女の子の体をこんなにベタベタ触るのは初めてだけど、なるべく変な気持ちにならないように、ローリエにやってもらったのと同じように頭から順に洗った。
「ありがとう。さあ、湯船に入ろう!」
湯船は広い。4、5人ぐらいまでは入れそうだ。2人で並んで入ってもまだまだ余裕がある。
「あ〜、気持ちいい」
湯船に浸かって、ゆったりとした気分になる。
「街、守れて良かったね」
「そうだね。魔物たちが城門に群がってきたときはどうなることかと思ったけど」
「魔物たちが動けなくなったのはサフランがやったんでしょ?」
「うん。とっさにね」
「あれはすごすぎるスキルだよね。みんなにバレちゃったかな?」
「どうだろう。ローズマリー先生は気づいているみたいだけど」
「ローズマリー先生なら大丈夫でしょ」
そんなことを話しながら、のぼせそうになるまでお風呂に浸かり続けた。
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