第25話 掃討

 城を取り囲むようにひしめいていた魔物たちが一斉に動かなくなった。


「あ、やば」


 これはちょっと大規模すぎる。

 ……とは思ったものの、丘の上からスキルを放っているし、誰も私がやったなんてわからないかもしれない。


「サフラン、この辺りの魔物は倒し終わったよ。新手はこないみたい。……え?これって!?」


 ローリエが眼下の様子を見て絶句した。


「サフラン、『治癒ヒール』たのむ~。この辺りは片付いたから城門のほうに行ってみようぜー。……え?」


 パセリたちも合流した。同じく眼下の様子を見て絶句している。


「皆さん、お疲れさまです。どうも残りの魔物が城門のほうに向かったようです。救援に行きましょう。……おや?」


 ローズマリー先生も眼下の城門・城壁付近を見て、一瞬固まった後、私にヒソヒソと話しかけてきた。


「これはサフランがやったのですよね? よくやりました。助かりました」


 私はみんなに『治癒ヒール』をかけた。


「ともかく戻りましょう」


 ローズマリー先生が声をかけて、みんなで街道沿いに城の方へ移動する。


「なんでこの辺の魔物は動かないんだ?」

「まぁ、楽に倒せるから、文句はないけどな!」


 パセリたちが疑問を呈しながらも身動きの取れない魔物を倒していく。

 周りを見ると、冒険者たちが一方的に魔物を倒している。魔物の取り合いになるほどのようだ。


 騎士たちは手を出さず、冒険者が倒すのを見守っている。私とローリエ、そしてローズマリー先生も、パセリたちが頑張って倒しているのを遠目に見ていた。


 しばらくすると城壁のまわりには魔物がいなくなり、騎士から城門に集まるように声がかかった。


 城門前に皆が集まると、最初と同じ30代ほどの男がお立ち台からみんなに呼びかけた。


「皆の衆、ご苦労であった! 一時は危うい場面もあったが、天は我らに味方し、無事に街を守り通せた!」


 おー!と歓声があがる。魔物が動かなくなった件についてはスルーしてくれるようだ。


「冒険者のみんなは明日以降に討伐部位をギルドに持ってきてくれ! 騎士の者たちは特別給金を支給する!」


 これまた、わー!と歓声があがった。


「ただ残念ながら、街を守るために犠牲となった者たちもいる。丁重に弔おう! 彼らの魂が天に召されるように!」


 そう言うと男はお立ち台から降り、どこかに消えていった。


「サフラン、ありがとな。助かったよ。それじゃ、俺らはこの辺でおいとまするわ」

「ええ、お疲れさま」


 そう言ってパセリたちは街の中に帰っていった。


「さて、では私は騎士たちと後処理をします。サフランもローリエも今日はお疲れさまでした。ゆっくり休んでくださいね」

「ローズマリー先生、ありがとうございました。まだお仕事されるんですか?」

「A級になるといろいろ頼まれごとが多いんですよ。それではまた」


 ローズマリー先生もいなくなり、ローリエと2人になった。


「さて、どうしようか?」

「お腹が空いたからご飯食べたいけど、その前に湯浴ゆあみに行かない? さすがに汗と埃で気持ち悪い」

「湯浴み? そんなのがあるの!?」

「この前、宿のおかみさんに確認したらあるみたいよ。ちょっと高いけど、個室浴場もあるお店があるらしいからそこに行こうよ」


 なんだってー!?

 私はドキドキしながらもローリエと一緒に浴場に向かった。



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