第21話 魔石

 ギルドに帰り精算をしていると、奥からローズマリー先生が出てきた。


「あ、サフランにローリエ。ちょうど良いところに来ましたね。ちょっとこちらに来てもらえますか」


 そうしてギルド長の部屋に入る。

 中にはギルド長のフェンネルさんとオレガノさんがいた。


「どうしたんですか?」

「朝、しょっぴいた5人組は覚えていますよね?実は彼らがこんなものを持っていたんです」


 そう言ってローズマリー先生が指さした先には、テーブルの上に禍々しい雰囲気の石がいくつか置いてあった。


「これはなんですか?」

「魔石です。ダンジョンで採掘できる石ですが、魔物を呼び寄せる効果があります。しかもこの大きさと数となると……」


 フェンネルさんが教えてくれる。

 魔物を呼び寄せるってことは……と思ったら、ローリエも同じことを考えていたようだ。ローリエが口を開いた。


「実は今日、30匹ほどのオークと遭遇しました。この前のオーガといい、街の周りにこんなに魔物がいるのっておかしいですよね?関係あるのでしょうか?」

「なに?30匹のオーク?」

「よく無事に帰ってこられましたね」

「間違いなく魔石の影響だろうな。おそらくこれは序の口で今から本格的な波が押し寄せてくるのではないかな」


 フェンネルさんの言葉に一同が静まり返る。

 私は疑問に思っていたことを口にした。


「しかし、なんであいつらがこんなものを?」

「尋問の結果、どうやら金で魔石をこの街に持ってくるように頼まれたようです。おそらくハバネロ帝国の差し金ではないかと」


 ハバネロ帝国?と思っていると、ローリエがコソッと教えてくれた。


「この国がハーブス・パイス王国で、隣にハバネロ帝国があるんだよ。ハバネロ帝国とは仲が悪いの」


 なるほど。敵国の国力を弱めるために魔物を利用しようとしたのか。


「おそらく一両日中には魔物たちがこの街にやってくるだろう。オレガノ、まずは急ぎこのことをカルダモン伯爵に知らせてくれないか。騎士たちの手配をしてもらわなくては。ローズマリー、君はこの魔石をダンジョンに捨ててきてほしい。ダンジョンの中では魔石の効果は無くなるからな」

「承知しました。さっそくカルダモン伯爵邸に向かいます」

「かしこまりました。では、魔石は頂いていきますね」

「私も久しぶりに実戦だな。よし、では解散だ」


 そうして、ローズマリー先生とオレガノさんは足早に部屋から出て行った。私たちも部屋を出ていく。


 フェンネルさんの指示でさっそくギルド内の掲示板に特別クエストが貼り出された。

 魔物の襲撃に対して、冒険者たちに防衛を呼びかけるものだ。


「サフラン、どうする?逃げちゃう?」

「うーん、私は治癒師ヒーラーとしてみんなの役に立てるかなと思ったけど。ローリエは斥候スカウトだから参加しなくて良いんじゃないかな」

「サフランが参加するなら私も参加するよ。危なくなったら隠密ハイドで逃げる。怪我したときはお願いね」

「もちろん! ローリエ最優先で『治癒ヒール』するよ!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る