第20話 オーク

 私とローリエは、ローズマリー先生たちが5人組をギルドに連行するのを手伝った後、街の外に薬草・薬茸採集に出発した。

 D級になったとはいえ、薬草・薬茸採集は安全だし、量さえあれば実入りも生活していける程度には悪くないので、危険を冒してまで魔物を狩る必要はない。


 いつものようにローリエの『索敵サーチ』で薬草・薬茸を探しては採取していると、ローリエが不穏なことを言い出した。


「サフラン、ゴブリンより強そうな魔物が近づいてくる」

「オーガかな?」

「そこまでは強くなさそうだけど、10匹どころじゃないよ。20か……30ぐらいいるかも」

「逃げる?」

「このスピードだと厳しいかも……。もう来ちゃうよ」

「とりあえず隠れよう!」


 私たちは藪の中に身を隠した。


「あれはオークだね」


 魔物が視界に入ると、ローリエがヒソヒソと私に教えてくれた。たしかに30匹ぐらいはいそうだ。


 ローリエの気配が感じられない。既に『隠密ハイド』を使っているのだろう。オークに見つかるとしたら私だ。


不動緊縛ふどうきんばく』を使うか。でももし効かなかったら、錫杖の音で相手に居場所を教えるだけで終わってしまう。


「私がなるべく数を減らすから危なくなったら助けて」


 そう言ってローリエがオークの方に向かった。

 1匹のオークが首元から血を噴出し倒れる。まわりのオークがキョロキョロとあたりを見回したあと、円陣を組んだ。


 円陣を組まれてはローリエもヒットアンドアウェイができなくなってしまったのか、膠着状態となった。

 私は状況を打破するために姿を表すことにした。


 私が姿を表すとオークたちが反応して私を取り囲もうとする。

 その途端、あるオークがまた首から血を噴き出し倒れた。しかし隣にいたオークがすかさずメイスを振り回した。


「ローリエ!」


 ローリエの姿が認識できるようになると同時に、ローリエが吹っ飛ばされ木に打ちつけられた。


治癒ヒール』!


 私はローリエにヒールをかけた。


 だが同時にオークたちが私に襲いかかってくる。思わず錫杖を振りまわす。錫杖に当たった数匹のオークが吹っ飛ばされる。


不動緊縛ふどうきんばく』!


 シャン!と錫杖を鳴らす。

 果たしてオークたちは……身動きが取れなくなっていた。金縛りが効いている。


 私は急いでローリエの元に駆け寄り、具合を確認した。


「ローリエ、大丈夫?」

「ああ、うん。大丈夫、ありがとう」


 私がローリエの手を取ると、ローリエが立ち上がった。


「うわー。これはすごいね」


 ローリエの視線の先には30匹近くものオークが身動きできずにグギギと立っていた。


「私は奥から倒してくるから、サフランは手前のから頼んでいい?」

「わかった」


 そうして私たちはオークの討伐部位を集め回った。


「まだ早いけど、これだけあれば十分な収入になるね」

「そうだね。今日はもう帰っちゃう?」

「そうだね!帰ろう帰ろう!」

「それにしても、なんでこんなところにオークがいたんだろうね?しかもこんなにたくさん」

「たしかにこの前のオーガといい、街の近くにこれほど魔物がいるのは変だね……。戻ったらギルドで聞いてみようか」


 そうして、私たちはまだ真っ昼間だったけれども街に帰ることにした。

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