第19話 連行

 翌朝起きると珍しく私より先にローリエが目を覚ましていた。


「おはよう。寝られた?」

「うん。でも早く目が覚めちゃった」

「そっか。早いとこ昨日のところに行ってみようか」


 準備を終え、昨日5人組に絡まれた場所に向かう。


「おー、ローリエにサフランじゃないか」


 現場に近づくと、ローズマリー先生とオレガノさんがいた。


「オレガノさん、お久しぶりです。ローズマリー先生、どうしたんですか?」

「身動きの取れない5人組がいるんです。しかも5人とも武器を持っていて、誰かと戦っていたようなんですよ」


 昨日の5人組だ。昨日は疲れて面倒だったのでそのまま放置してしまったが、まずかったかな……。

 それにしても何で2人がここに来ているんだろう?不思議そうな顔をしているとオレガノさんが教えてくれた。


「B級以上の冒険者は街の治安維持も任されているんだよ。今朝ギルドに行ったら、ここの件を教えてもらってね」


 その時、5人組の中の歯の折れた男がこちらを見て喚いた。


「あ、てめえ! ぶっとばしてやる!」

「2人はこの男たちを知っているんですか?」

「実は昨日の夜、宿に帰る途中に襲われたんです。でも突然、彼らが動かなくなったので、そのまま帰りました」


 ローリエが答えてくれる。私はローリエに任せて黙っておくことにした。


「なるほど。応戦する前にこいつらが動かなくなったんだな?」

「そうです。僕たちも不思議だなと思いながら逃げました」

「ふーん。なるほど……」


 なるほどと言いながら、ローズマリー先生は私の方をジト目で見ている。私が何かをしたのが見透かされていそうだ。


「とりあえず捕縛してギルドに連行しましょう」


 そう言って、ローズマリー先生とオレガノさんは縄を出して縛り始めた。


「しかしどうやって連れて行きましょうね。サフランさん、その辺の路地裏に牛車でも転がってないでしょうか?」


 5人組を縛りながら、ローズマリー先生が私をニヤリと見て聞いてくる。


「そ、そうですね……。ちょっと探してきます!」


 近くの路地裏に隠れた私はすぐに錫杖をシャンと鳴らして、『不動緊縛ふどうきんばく』を解除した。

 表通りから騒ぎ声が聞こえてくる。


「お、動けるぞ!」

「くそ!捕まってたまるか!」

「うがっ」

「ぐふっ」


 騒ぎ声が落ち着いて表通りに戻ると3人は大人しく縛られていたが2人はローズマリー先生とオレガノさんに打ちのめされて伸びていた。


「ローズマリー先生、牛車はありませんでし……あれ?動けるようになったんですか?」

「サフラン、ありがとうございます。牛車はありませんでしたか。しかし、よくわかりませんが、動けるようになったようです」


 白々しい私の言葉にローズマリー先生も合わせてくれる。


「動けるようになったのは良いが、まさか抵抗してくるとはな。それじゃローズマリー、連れていきましょう」

「ええ。さあ立って歩いてください」


 伸びた3人にも縄がかけられ、5人組はローズマリー先生たちによってギルドへ連行されていった。

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