第18話 不動金縛

 私とローリエは、お店に戻り、残っていた食事を食べている。


「サフランさ。さっき私に何かをかけてくれたでしょ?」

「あ、そうそう。あれが『心頭滅却しんとうめっきゃく』よ」

「そっか。一気に酔いが醒めて、頭も体もシャキッとしたよ」


 あまり長居するのも気まずかったので、食事を終えると早々に店を出た。

 店を出てみると、さきほど気絶した男が居なくなっていた。もう目を覚ましたのか。


 少し嫌な予感を感じながら、宿に向かって歩いていると、案の定、人が居ない通りで暗闇の中から5人ほどの人影が現れた。


ひょおよおはきほほはさきほどはひょくもひゃってくれたなよくもやってくれたな


 さきほどの男を中心に残りの4人が私たちを取り囲む。

 私は早く宿に帰って休みたかった。


 シャン!


 心の中で『不動緊縛ふどうきんばく』を念じ、錫杖を鳴らす。

 とたんに身動きできなくなる5人。


「行こう、ローリエ」

「う、うん」

「て、てめえ!」


 包囲網をすり抜けて帰る私たちと、罵詈雑言を喚く5人組。

不動緊縛ふどうきんばく』って、時間が経つと勝手に解除されるのだろうか?などと思いながら、私たちは宿に帰った。


「サフラン。あの人たち、大丈夫かな?」

「わかんないけど、一晩ぐらい良いんじゃないかな。明日の朝、見に行ってみようよ」

「うん。その後、ギルドに相談しに行こうよ。街の治安を守るのもギルドの仕事だから」

「そうなんだ。じゃ、そうしようね」


 『不動緊縛ふどうきんばく』が解けてしまったとしても、奴らは私たちがどこに泊まっているか知らないはずだ。しかし、念には念を入れて、ドアに鈴をかけ、私は錫杖を持ったまま寝ることにした。


「おやすみ、ローリエ」

「おやすみ、サフラン」


 私たちは眠りについた。


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