第12話 オーガ

 私たちは、ボス部屋から練習用ダンジョンの出入口に向かって移動していた。もうすぐ外に出られるというところで、ローリエが口を開いた。


「ダンジョンの外にかなり強そうな魔物がいる」

「え! パセリさんたちは大丈夫かな?」

「この気配は……急ぎましょう」


 ローズマリー先生も焦っている様子で、さっきまでは最後尾だったのに、これを境に先頭をきって進み始めた。


「ローリエ、サフラン、戦闘準備をお願いします」


 そう言って、ローズマリー先生が抜剣した。ダンジョンの中で暗いにも関わらず剣が輝いている。


 ダンジョンを出る。果たしてそこに居たのは3メートルはあろうかという化け物が10体以上いた。パセリたち3人とオレガノさんが対峙しているが、パセリたちはボロボロになっている。


「先生、これは!?」

「オーガです。自分の身を守ることを優先してください」


 そう言って、ローズマリー先生は一番近くに居たオーガに斬りかかった。

 さすがに早い。1匹のオーガから血しぶきがあがる。


「『治癒ヒール』!」


 私は『治癒ヒール』を使って、パセリたち3人とオレガノさんを回復させる。さすがにボロボロになった装備は元に戻らないが、パセリたちの表情に生気が蘇る。


「サンキュー! サフラン!」


 パセリたちが構え直して、オーガたちに向き合った。

 しかし、パセリたちは3人でオーガ1体と対峙するのがやっとのようだ。


治癒ヒール』を使って一瞬気を抜いてしまったのだろうか。別のオーガが棍棒を振り上げて私に襲い掛かってきた。


「あぶない!」


 その声に私は反射的に目を瞑って、しゃがんでしまった。

 棍棒と剣がぶつかり合う鈍い音がして、目を開けるとローズマリー先生が倒れていた。私を庇うために間に入って、剣を合わせたが体勢が悪く倒れてしまったようだ。

 追撃のためにオーガが棍棒を振り上げる。


「ええい!」


 無我夢中で、私は錫杖をオーガに向けて振り回した。


 ガスン!


 何かが当たった感覚は合ったが、手応えはなかった。

 しかし気づいたときにはオーガが倒れており、体の一部が変なふうにへこんでいる。


「え?」

「すごいよ!サフラン!」


 ローリエの声がして、私は自分が振り回した錫杖でオーガを1体ノックアウトさせたことを理解した。


「ありがとう、サフラン。助かりました」

「いえ……。オーガって意外と弱いんでしょうか?」

「そんなことはありません。よくわかりませんが、その杖が妙に強いような気がします」

「これがですか」


 そうとわかれば、何となく自信がでてきた私は、残りのオーガに対しても錫杖をぶんぶん振り回して、気づけばオーガはいなくなっていた。ローリエは私の背後に位置取り、不意討ちされないように牽制してくれる。


 すべてのオーガを倒し終えた後、ローリエがオーガの数を数える。


「ローズマリー先生が6体、サフランが4体、オレガノさんが1体、パセリたちが3人がかりで1体。全部でオーガは12体だね」

「何にせよ、みんなが無事でよかったです。サフランさんは大活躍でしたね」

「えへへ、ありがとうございます」

「すごいじゃんかよ、サフラン!」

治癒職ヒーラーにはもったいないな」


パセリたちも私のことを讃えてくれる。


「さあ、討伐証明部位を切り取り、ギルドに帰りましょう。D級講習は全員合格です」


 こうして、私たちは無事にD級講習を終えて街に帰っていった。

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