第11話 ダンジョン2
ボス部屋に近づいたあたりで、パセリたちとすれ違った。
「お、ローリエにサフランか。見てくれよ、これ」
そう言って、パセリたちは武器を見せびらかしてきた。
パセリは盾を持っていた。機動隊が使うような全身を隠せるほど大きなものだった。もちろん材質は違うし、かなり重そうだ。
ジンジャーはクロスボウだった。飛距離、威力、命中率ともに通常の弓とは比べ物にならないほど良いはずだ。
マスタードは幅広の両手剣だ。いわゆるバスターソードだろう。
「僕たちの分も見つけた?」
「ああ、どこに隠されているかも知っているけど、オレガノさんから口止めされているからよ。自分らで探してくれよな」
「そうだね。よし、サフラン。早く行こう」
そうしてパセリたちとは別れた。
ボス部屋に入った私たちは、本当にダンジョンボスが居ないか確認した。ボス部屋は広く、学校の体育館ほどの広さがある。
「それぞれ別れて探そうか。僕はこっち側を探すから、サフランはあっち側を探して」
「わかった」
暗くてなかなか大変だ。壁に沿って探していると、足元に排水口のような窪みを見つけた。
(これかな?)
窪みの中に隠してあるんじゃないかと思い、手を差し込んでみると、何か棒状のものが手に当たった。そのまま掴んで慎重に引っ張り出してみる。
黒い棒のようだが、私はこれに見覚えがあった。
「これって、親父が送ってきたものとよく似ている……」
思わず独り言が漏れてしまった。出てきたものは、この異世界に飛ばされる直前に振り回していたあの錫杖そっくりだった。棒の先に輪が付いていた。
(まあ、たしかにヒーラーぽいといえばヒーラーぽいかな?)
そう思って、ローリエと合流することにした。
「ローリエー! それっぽいのがあったよー。そちらはどうー?」
ボス部屋の入り口まで戻ってくると、短剣をもったローリエがやってきた。
「おまたせ。これ見て。ショートソードがあったよ」
「わあ、ローリエにぴったりだね」
「サフランは杖だったの?」
「そうだよ。見てよ。なかなか丈夫そうでしょう?」
「そうだね。ちょっと見たことない形だけど」
ローリエと話していると、ローズマリー先生が口を挟んできた。
「サフラン、それはどこで拾ったんですか?」
「え、そこの窪みの中ですけど……」
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
「あ、はい、どうぞ」
そう言って、錫杖を渡そうとしたが、ローズマリー先生が手を滑らせたのか錫杖を落としてしまった。ドスンと音がして地面にめりこむ。
「うわ、重そう」
「失礼しました」
ローズマリー先生は錫杖を拾おうとしたが、手間取っている。
「あ、いいですよ。私が拾います」
錫杖を拾い上げる。たしかに重いのは重いけど、持てないほど重いわけでもない。
ローズマリー先生が、私の持っている錫杖をしげしげと観察する。
「ありがとう。すみませんが、ちょっと待っててもらえますか」
そう言って、サッとどこかに行ったローズマリー先生はすぐに別の杖らしきものを持って、また現れた。
私が見つけた錫杖は2メートル近い長さがあるが、ローズマリー先生が持っている杖は50センチメートルほどのものだ。
もしかして、私はローズマリー先生が隠した武器とは違うものを見つけてしまったのだろうか?
「お待たせしました。では帰りましょうか。ダンジョンから出るまで気を抜かないようにお願いしますね」
ローズマリー先生にどういうことか聞いてみたいと思いつつも、聞いてはいけないような気がして、もどかしい気持ちを抱えつつ、私たちは帰路についた。
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