第7話 スキル2

 私たちが薬草を採るのに夢中になっていると、草木を踏み分けて何かが近づいてくる足音が聞こえてきた。


「ローリエ、何のおt……ッ」


 音のする方を振り向くと、三匹のサルのような動物が間近に迫ってきていた。


「ゴブリン!」


 ローリエが叫ぶ。ゴブリンというらしい。明らかにこちらに敵意を向けている。私はローリエの元に駆け寄った。


「ローリエ、逃げるよ!」


 ローリエの背中を押して逃げようとしたが、背中に石をぶつけられた鈍痛を感じて、うずくまってしまった。


「ローリエ、逃げて!」


 そう叫び、私はせめてローリエが逃げる時間だけでも稼がなければと考えたが、ゴブリンたちが私に追いついて、めった殴りにしてくる。武器は棍棒と投石のようだ。


(『治癒ヒール』!『治癒ヒール』!)


 早く『治癒ヒール』をしなければと体を丸め目を閉じて念じていると、あの不思議な感覚を感じた。


 すーっと痛みがひき、顔をあげて、周りの状況を確認する。ゴブリンは三匹とも私を殴っている。ローリエの姿は見えない。


(よかった。うまく逃げられたのかな)


 ローリエが近くにいないことを確認し一旦安心するが、私は殴られっぱなしである。何度も『治癒ヒール』を繰り返しているが、このままではジリ貧だ。


 と、その時、三匹いるゴブリンのうち一匹が変な声を上げて倒れた。残りの二匹がそのことに気づいたが、今度は次の一匹の首元から血が噴き出した。


 最後の一匹は私を殴るのを止め、周りを警戒し始めたが、同じく首元から血を吹き出し倒れこんだ。


 一体誰が倒してくれたのだろうかと考えていると、突然ローリエの姿が現れた。


「あ!」と声をあげ私は理解した。ローリエは逃げたのではなく、『隠密ハイド』でゴブリンの背後に回り込んでいたのだ。


「大丈夫? サフラン。怪我はない?」

「平気よ。何度も『治癒ヒール』したけどね」


 そう言って、私はローリエにも『治癒ヒール』をかけ、お互い抱き締め合って、無事を喜んだ。


「よかった。無理しないでよね」

「うん、ごめん。助けてくれてありがとう」

「サフランだけおいて逃げるなんて、絶対にしないからね」

「うふふ。ありがとう。でもこの戦い方は良いかもね。私が引き付けておいて、ローリエが後ろからグサリと」


 そうして一時休憩した後、私たちは薬草を採り終えて、帰路についた。

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