承【異界に来てみたら】

第04話.異界探訪【柚人SIDE】

 毎年、沢山の観光客でごった返す心桃湖しんとうこで。僕は逃げ惑うにげまどう見物客の渦に押し込まれる形で、湖の中に引き摺り ひきずり込まれてしまって。


 心桃湖の水中深くで何らかの歪みゆがみ呑み込まれのみこまれ てしまい、そのまま意識を手放したんだ。コレ、絶対溺死できしだよなwww



 ところが……











 ん……僕、まだ死んでない? 僕が再び意識を取り戻した時、川辺の浅瀬あさせに横たわってたんだ。って云うか、此処ここって何処どこよ?



 周りをぐるって見渡してみる、心桃湖とは似ても似つかない景色が広がって居て。そうだ、逸れた萌々華ももかは何処に? 無事なんだろうか?


 それどころか川辺に日本に居る筈の無い、見た事無い生物が目の前に。ぷよぷよ、ぽよぽよ。ぷるるんボディ。



 初心者が闘っちゃ、絶対アカンやつやん!



 そりゃもう、周りを気にせず悲鳴を上げ、必死で逃げたさ。状況把握が出来ないまま近くの、ゴツゴツ岩に覆われたちっぽけな村へ逃げ込んで。






 どうやら其処は、『雪降りの里』と云う名前らしくてさ。町のフォルム、藁葺き わらぶき屋根の住宅。似てるんだよなぁ……あの白川郷しらかわごうに。


 其処そこに住んでる人達に、真っ先に聞いて廻った まわったよ。でも、返って来た答えは……萌々華の安否は依然不明いぜんふめいなままって事だけ。






 でも、此処は僕みたいな「刻の理か ときのことわり ら盛り零れた」者に寛容かんような町。親身になって話を聞いてくれて、皆助言も惜しおしまないんだ。


 まずはこの世界に順応出来る様に自分の身体を馴らしならし、その後にこれから先の辿るたどるべき路を模索みちをもさくしなさい……と。











 里の人達からのアドバイス通り、何年にも渡り僕は懸命に身体を鍛えてきたえて。情報を求めて、移動範囲を広げて行ったんだ。


 草原の移動キャラバンのテント村。ジャングルの原住民の村。火山の地下熱の周りに集う町。海辺の水の恵みに潤い賑わううるおいにぎわう町。






 その結果、分かった事は……まず、此処がアルカディア大陸だと云う事。そして、僕が転移者だったと云う事。最後に……




 元の世界に帰る、すべが存在しないって事。




 この結論に達する迄……実に10年の月日を要して。結果、萌々華の居場所は分からない。元の世界に帰れない。何してたんだよ、チクショウ。











 異世界の住人達と闘いながら、足を棒の様にして駆けかけずり回った10年間。流石さすがに、ココロのつっかえ棒がポッキリ折れる位キツかったぁ。



 もう僕、何処を歩いてるのか、どれだけ歩いてるのか……朦朧もうろうとしてて、思い出せないよ。



 もう此れで終わりにしようって、傷心した僕がふらふらっと最後に・・・立ち寄った場所。其れそれは、竜人達の隠れ里だったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る