第02話.プロローグ②【柚人SIDE】

 僕の名前は、海野うんの 柚人ゆずと。彼女の萌々華ももかと付き合い始めて3回目のデート。とても大事に、大事に愛を育んでるはぐくんでるんだ。


 デートの場所は、市内の心桃湖しんとうこ。萌々華から、朝早くに行きたいって聞いてさ。そんな早朝に何が有るんだろ?






 運命のときまで、後2時間。



 さぁ、心桃湖に来たぞ。今は4時、萌々華はに居るんだろ? あ、もう既に心桃湖の駐車場で僕を待ってたよ。


 えらくニコニコしてるな。どうしても「今」に来たいらしくてさ、手を振って僕を出迎えてくれたのさ。






 運命の刻まで、後80分。



 うわっ、どんどん観光客が集まって来たぞ? 一体、どれだけの人数が心桃湖に来てるんだろ? 千人単位じゃ済まないぞ?


 見たいのはこっち、とくいくいそでを引っ張り僕を連れて行く萌々華。一緒に来たのは心桃湖全体が見渡せる、少しだけ小高い丘。






運命の刻まで、後40分。



 あ、萌々華が此処へ連れて来た理由が漸くようやく分かったよ。小高い丘から2人で心桃湖を見てると、朝日が湖に射し込んで……


 ハート型の湖が、徐々にピンク色へ染まって行ったのさ。ロマンチックな奇跡に感動してると、隣に居る萌々華が僕の顔を見ながら。



 静かに、瞳を閉じて……チュッ。



 萌々華のファーストキスを、僕にくれたんだ。そうか、今回のデートは心桃湖に行きたいって、この為なんだね。


 キスの後、いつもの様に萌々華の鼻がひくひく動いて。好きな人の匂いに満足し、にゃん♪とひと言。恋人の僕しか知らない、萌々華のくせ






 運命の刻まで、後10分。



 何やら後ろがさわがしくなり、何事かと後ろを振り向いたら。大波の様に流体雪崩が りゅうたいながれ 押し寄せて居て。身動きの取れない、死のドミノ。


 つなぐ手と手は、命のたすき。決して放さないよ、と萌々華にニコッと微笑んで僕は萌々華を護る盾まもるたてになるって誓ったんだ。






 運命の刻まで、後5分。



 でも、そんな僕の考えは甘かったんだ。この時の敵は、流体雪崩だけじゃ無かったんだ。逃げまどう見物客の流れがうずになって居て。


 渦の流れの強力さに、二度と放さないと誓ったハズの命の襷は呆気無く あっけなく千切れてちぎれて しまい。萌々華と生き別れになってしまったんだ。






 萌々華と引き裂かれた僕は、そのまま見物客の流れの渦に取り込まれて。心桃湖の水中へ引き摺 ひきずり込まれてしまったんだ。


 自分ひとりだけで無く、大勢の人達も道連れだから浮かび上がる事が出来なくて。ゴボッと全ての息を吐き出して。






 運命の刻、うっすら覚えてるのは何らかの歪みゆがみみ込まれてく僕。ゴメン萌々華、守れなくて……

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