第2話 道標
「「少し落ち着いたか?娘よまず名を名乗ることを許す。話はそれからだ」」
金の髪、純白の4対の翼、それに溶け込むような白磁の衣装と金の羽衣。本で見る女神のような美女から発する言葉の一つひとつには、得も言われぬ圧力があった。
「・・・クトゥラ」
「「我が名は、大神である
聞いておきながら名は呼ばず、優しい声根に対し言葉の圧力が増していき冷汗が止まらない。これならまだしばらくあの副神の方のバァルと喧嘩してた方が幾分かましな気がしてきた。
「亡き父の願いで世界を見て回るようにと、それで理に干渉してこの場所を探して次元を繋げて跳んだ」
「「なんだ、普通に会話が成立するではないか!何故殺し合いに発展したのか不思議なくらいだぞ?」」
「?」
それはこちらが聞きたい急に結論付けて攻撃してきたのバァルの方である。次第にクトゥラ自身もよくわからないままに争っていたので滑稽な話で合った。
「こちらが考え事をしている間に勝手に結論付けて喧嘩打ってきたのはバァルの方。私に比はない」
「「だ、そうだぞ?バァル弁解はあるか?」」
「「ぐっ!そういわれると早計な判断をしたと言わざるを得ン。だが、万が一もある為後悔は微塵もなイ」」
「「くくく、あの剣神が形無しだな!しかも神域を使わなかったとはいえ泥仕合をするとは、マルスが見たら嘆いてたぞ」」
「「お戯れヲ、それと娘の実力に不釣り合いの領域の大きさに対する詰問はしないのですカ?」」
「「亡き父と言っておろう、継承でもしたのだろう?半神半魔で大神に届きうる領域の大きさは流石としか言いようがないな。その父とはさぞ長生きしていたのだろう」」
「?話が見えない・・・つまりどういうこと?」
向こうで会話が勝手に進んで脱線しすぎて話が読めない。ついてこれない。気になる単語が多い。このままだとそのままどこかへ行ってしまいそうな雰囲気すらある。
「「無実だろうもしくは、今は気にする程の事ではないということだ」」
「はぁ・・・」
「「では今後の話をしようか、先ずは世界を見て回るのに手っ取り早いのは人の社会に触れることだぞ?」」
「「大神ヨ、神が自ら人の世に干渉するのはいくら最高管理者といえどご法度だゾ?」」
「「娘は正確には、神ではない。それと、ある程度保険を賭けてから人の世に放すさ
」」
人の社会・・・想像つかないな。まずは会ってみないと、バァルのように好戦的じゃないといいんだけれど。
「「それとな?娘よ、人の世に降りるというならば星の理に干渉する事を禁ずる。あれは世界の時空を崩しかねん。先の戦いで見せた変身の部類は大丈夫だがな」」
「もし破ったら?」
「「・・・危険分子とみなし全勢力をもって貴様を滅ぼす」」
「っ!!!」
あまりにも大きな殺気に呼吸することも一瞬忘れてしまった。
「うっ・・・わかった」
「「うむ、努々忘れてくれるなよ?」」
人の社会か、星の理に干渉できないということは転移も探知もダメということだ。まっすぐ進めばいずれ人にも会えるのだろうか。
先行きは不安だけれど方針は決まったので良しとしよう。
「うん、じゃあ話しは終わったということでいい?早速人間というのに会いに行きたい」
「「おい待て待て!まさかそんな恰好で行くつもりか?」」
「?何かダメ?」
「「ダメも何も内に布一枚にローブを纏ってるだけだろう!どこの閉鎖的な時代の人間だ!今時そんな恰好したやつは見ないし怪しいし貴様の見目だと間違いなく絡まれるぞ!」」
動きやすくていいのだけれどこの格好はダメなのか、早速ダメ出しを言われてしまった。
「「・・・先ほどの武器を顕現させロ物質化させてやル。」」
「「そういうわけで衣類もバァルに見繕ってもらえ、それらが一般的と呼ばれる格好だ」」
指示された通りに大剣を召喚する。力の放出をする事に関して、まだ慣れていないため姿もそれに適したものに変質してしまう。全身を炎に纏っているためか周囲が徐々に焦げてきているのが見て取れる。
物質化といわれて想像するにエネルギー体のこの大剣を何らかの形に変質させるのだと思うけれど本当にできるのだろうか?
「「フン、我の神域を使えば造作もなイ」」
「「それが貴様の戦闘スタイルということか、悪くないがまだ自身の力の全貌を掴めていないところか」」
確かに目が覚めてから間もなく転移もしたし何より戦う機会なんてこれまでなかったのだ。あの時バァルの言った通り経験値が足りないというのは事実であり自身が思っている以上に継承した力を使いこなせていないのだろう。
「一目でそこまでわかるの?」
「「戦い慣れている中級神レベルなら一目で見抜ける程度にはな」」
「そっか・・・」
「「でなければバァルも手を抜くことはなかったぞ?」」
「え?」
あの喧嘩で私は手を抜かれていたのか?だったらなぜさっさと戦いを終わらせなかったのだろうか、そうすれば面倒もなかっただろうに。
「「判断を私に委ねるために時間を稼ぐことを念頭に神域を使わずの戦闘、己の技術を磨くためとかそういったところだろう。本来なら腰に下げている剣以外にもあの背に浮く九つの剣が貴様に牙を向くし周囲一帯を万を超える剣で埋め尽くされていただろうよ」」
「・・・神域ってなに?私にも使えるの?」
「「神域とはその神の在り方によって生まれ持った能力だ。バァルの場合、いくつかあるが代表的なものが先にも伝えたように『剣界』と『
「「大神ヨ、それでも十分話しすぎダ。娘よ次からはこれを常時持ち歩くようにシロ、その纏っている状態は、人間には酷だ。可能な限り使うな」」
そういって渡されたのは先程の大剣の形をしたエネルギー体を重ねるように圧縮し少しだけ小さくなった漆黒の剣だった。サイズ感は大剣から腰に下げてるとちょうどよさそうな大きさの剣に切り替わっていた。
「「銘は『ローウェン=ソル』人間が近くにいる時はそれで戦エ、貴様の炎は人間には暑すギル。それと服はこれがいいだろウ。とっとと着替えてここから去るがイイ」」
「・・・」
「「ナンダ?」」
「いや、別に・・ありがと」
受け取った衣装は黒と白の調和のとれた色合いのバトルドレス。細部に金の装飾がされており、普段の白銀の髪や紅が合わさった時の髪とも両方に似合いそうな立派な装備に驚きを隠せない。
・・・この一瞬で作り出したの?
疑問を抱きつつもそそくさと着替えることにした。着心地もよく先ほどよりも動きやすく感じる。
「「これで人前に出しても恥ずかしくないな!!」」
最初の恰好は本当によろしくなかったようだ。
「・・・さっきの質問」
「「なんだ?」」
「私にも神域は使えるようになる?」
「「ふむ・・・それはまぁ、貴様次第だろう」」
「?」
「「神域とは神としての在り方によって生まれる力の結晶だ。貴様の理の干渉はそれに近い気がするがこの世界ではどちらかというと魔法のそれに近い」」
「魔法・・・」
「「要するに貴様の力はまだ馴染んでいないから出来ていない。まぁ凡その検討はついてるがどう進化させるかは貴様次第だろう」」
「うん・・・」
「「ここから一番近い国は東の方に直進するとウェスタリア王国がある、貴様の足なら3日でつくだろう、精々楽しみなさい」」
「「次我と戦う時はもう少し技を磨ケ、せめて神域を必要と感じさせる程度になってることを期待すル」」
「・・・うん、色々とありがとう。それじゃ」
色々ありすぎたけれども道が見えた、先ずはウェスタリア王国に向かうことにする。そこから知識を蓄えて他の国々を見て回ろうかな────。
「「近いとはいえ何故ウェスタリアヲ?あそこはあと数年もすればサウズヴァストとの停戦が解除されてすぐにでも開戦されるというのニ」」
「「人の歴史は戦いの歴史、多くを知るにはあそこの方が都合がいいだろう」」
「「確かニ・・・、北は竜を祀ろう国、東と南は神の支配を目論ミ、西は多様性を望み比較的外からの受け入れが柔らかイ。南に限ってハ、他国の支配も企んでいると聞ク」」
「「人魔大戦が先か南による戦争が先か・・・良い経験となるといいがな」」
「「外からの神による警戒もあル」」
「「くくっ、それもあったな!その時はあの娘にもさっきの借りの返済として力になってもらうとしようか」」
「「・・・それがよろしいかと」」
「「まさか『
「「それはなんダ?」」
「「我々が捨てたものだ、今更気にする必要もない」」
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