プロローグ2
──それは、いつかの星の記憶。
「ほぉ?これはまた珍しい」
「ーーーーーー??」
その男は、世界中を巡っていた。
その男は、星の管理者と呼ばれていた。
その星は、度重なる災いの後、輪廻の終末を迎え再生の機能を失ってしまっていた。
それでも男は、歩き続けた。ゆっくりと確実に進む滅びを見届けるために。
奇跡とは、この事を言うのだろう。生まれるはずのない魂が肉塊に宿り、その男と出会うことが出来たのだから。
「輪廻が崩壊した後に死してなお魂が消滅しなかった者がおるとは…、よもや自ら肉体を作り出すとはな……」
「ーーーーーー?」
「衰弱しておるが、意識がはっきりしておるな。どれ、余生として最初で最後の子育てでもしてみるかな」
男は、肉塊をそっと抱き上げ霧の中へ消えていくのであった──
「ふぅ・・・んん・・・・・・??」
あれから何日が経ったのだろうか。名前の知らない星で身体を休ませるようにずっと眠っていた。
その場所は、魂や星の輝きを感じることが出来ず、あるのはただの無機質な暗闇のみの空間だった。
「そういえば、色々な場所に行って世界を知るよう言われたっけ」
胸に残る悲しみと若干の気怠さが残る中、父の最後の願いを思い出す。
─探せ─と父は願った。何を探せというのか?世界?命?美しさ?愛?。思考の海に潜れど結論が生まれることはなかった。
そもそもクトゥラには、自分という個性を持ち合わせていなかった。クトゥラにとっての世界とは父だけだったのだから。
「もしくは、これら全てなのかな?」
適当にそれっぽい目標はできた。あとは実行するだけだ。世界は場所は何処だっていい。見たままの景色に感じるものはない。命を探すということは先ずは魂の感知が重要だろう。より強い魂を感じ取れれば、場所の把握もしやすくなる。美しさや愛など感情的なものはそれこそ知らん。感情の発露など意識したことないし気が付けばそうっだったのだろう程度だ。なら今は魂の感知を第一に目的地に向かうとしようか。
「お父様が消えてしまった時に感じた胸の痛みは、多分悲しみかな」
小さく呟きそっと目を閉じ周囲に意識を拡散するように侵食するように真っ白のキャンバスに水を少しと黒をちょっと合わせるように少しずつ侵食させていく。
「・・・・・・!!・・・みつけた」
強い魂を感じ取れた。その場所は、私たちが住んでいた星よりも広さで言ったら5倍程だろうか、とにかく大きい。
「魂の輝きは、お父様のものと比べると小さいな。でも、本当にいるんだね。他の星にも魂の輝きが」
微弱ながらも他にも多く感じ取れる。数えるのも面倒なほどに多い。
「想像できないなぁ」
少しだけ楽しみになってきた。これが好奇心というやつなのだろうか?
形だけの深呼吸をする。意識を切り替える。目指す場所が決まった。理に干渉する。世界と世界をほんの一瞬コンマ1秒にも満たない時間繋げ移動する準備を始める。
『森羅万象よ声を訊け。世界よ繋げ星よ繋がれ。万象の理に沈黙を示せ。我を彼の地に導き繋がれ─コネクト=コスモス─』
次元が揺らぎ歪んだ空間が私を飲み込み彼の地へ誘う。寂しさと期待が入り混じり、よくわからない感情がひしめき合う。それでも、これだけは言わなければならない。使命感に近い何かによって一瞬だけ振り向きひとこと。
「いってきます」
これが私の、旅の始まりだ。
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