楽園からの旅人

SNOW

プロローグ

 少女は横たわる男に懇願する。

「いやです。お父様……逝かないで。わたしをひとりにしないで……」


 男は少女にこう告げた。

「世界とは、どこまでも悲しく、時に美しいものだ。このせかいはまもなく形を失くすが世界は広く生命に愛されている。時間は掛かるかもしれないが探してみなさい……。私は、お前の幸せをいつまでも願い続けているよ」

「……っ!!」


 啜り泣く少女に男は瞳を閉じて天に手をかざしせかいに宣言する。


『森羅万象よ訊け、我告げる。我が魂全ての理を、汝クトゥラに与える。─キルロノミア─』


 同時に蒼炎が男を纏い燃やし少女の内に膨大なエネルギーが流れ込んでくる。


「さらばだ、我がいとし子。継承する理力が膨大故馴染むのに時間を要するだろうが、貴様なら巧く扱えると確信しとるよ。」

「やだ!消えないでお父様!嫌だよ!やだやだやだ!っっっ!!!!!」


 そうして、1つのせかいが静かに終焉を迎えたのであった───。



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