告白するおはなし④
センは自宅で電話を受けていた。
「おかしいな……」
チイからの電話だ。てっきり仕事の用事かと思ったが、声をかけても返事がない。操作を間違えてしまったのだろうかと考えるものの、そうならば一言謝罪があってもいいだろう。
「一旦切りますね。何かあったらまたかけてくださーい」
センは苛立ちながら、電話に向かって投げやりに声をかけ、スマートフォンを耳から離す。
その時だった。
「もしもし。セン?」
センは耳を疑った。
紛れもなくクロの声だ。センはスマートフォンを再び耳にあてがった。
「クロ? え、なんで?」
思いもよらない出来事に、センの声が弾む。
対するクロの声は、随分と暗く萎んでいる。
「ごめんなさい。大晦日の日、急に帰ったりなんかして」
あまりにしおらしい。クロらしくない。センは、何かあったのだと勘づいた。その何かが、鐘つきからの帰り道、その瞬間に起こったということにも。
「あの時の羽根に関係ある?」
センは訊ねる。クロは沈黙する。
急かすようなことはしなかった。ただ黙って返事を待った。クロが、話したがらないことを話そうとしていると、センは理解していた。
「あの時、センは訊いたでしょ? 私が何の
クロの声が震えている。
センは待つ。
「私、クロインコなんだ」
センは、その一言で全てを察した。
あの時散った羽根は、クロが姿を現さなかったのは、そういう意味なのだと。
センは迷わなかった。すぐ
「クロ。エトピリカにいるんだろ?」
「そうだけど……」
「今すぐ行く!」
「えっ、でも……」
クロはきっと、心構えなどできていないだろう。
だが、今日のこのチャンスを逃せば、二度とクロに会えないような気がした。
「そこで待ってて。いいね?」
センはそれだけ言い残すと通話を切る。
ジャケットを羽織り鞄を掴んで窓を開けた。
自宅から駅までは、どんなに急いでも徒歩で十五分。電車の待ち時間も考えると、エトピリカに着くには三十分後。
センは、オカメインコ族の鳥子である。
歩くより、走るより、飛ぶ方が遥かに速いのだ。
「そんなに時間かけてられるか」
センは窓から飛び出した。
翼を広げて羽ばたく。彼の体はふわりと浮いた。
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