4.呼ぶ

 昼と見紛うばかりの白で視界が奪われる。

「やっべ、影から出た。回避回避っと」

 目を瞑っても打ち間違えることのないコンソールを叩き、星屑の裏側へと隠れる。

「八連太陽宙域は砂漠だからな。慎重に行くしかあるまい」

「そうだなぁ。ン。救助要請信号……? エゼット!」

「ああ」

 髪の毛で器用にパネルを操作するエゼットの傍らで周辺の目視を担当する。ここではセンサー類がほぼ役に立たない。

『――た……て、誰か……』

 細く弱い声が静かな船内に響く。三キロ先の小さな小さな星屑の影で、米粒ほどの青い光が規則的に瞬いた。目視確認よし。

「宇宙船イグニスから旗艦へ。宇宙航空法に則り救助する。状況を知らせてくれ。オーバー?」

『宇宙船ホニャルトラッピョからイグニスへ。船が故障して動かせないんだ! 船は破棄するから船員五名を保護してほしい。オーバー!』

 相手の出身惑星を割り出し終えたエゼットが、無言で頷いた。保護可能らしい。

「イグニスからホニャルトラッピョへ。了解。今からそちらへ向かう。オーバー」

 通信回線を開いたまま星の影に隠れながら進む。直線距離なら二分で済むが八個もの太陽を迂回し進むのは骨が折れた。誰も何も言わない。耳が痛くなるほどの静寂がお互いの船内に満ちる。

 命綱を相手の宇宙船に打ち込み、体長十センチの小さな五人全員を船内へと招き入れた。船は全長で三メートル程度だった。みんな煤だらけだ。全員泣きながら手を取り合って喜んでいる。

 風呂と食事を提供されて安心しきった小人のうち四人は、もう目を閉じかけている。かわいいなぁ。コーンスープをゆっくり飲んでいるリーダーの横に跪き、目線を合わせる。

「リーベックス。この船は曳航していくけれど、いいかな」

「構わないけど、どうするんだい」

「他の宙域にツテがあってね。修理を頼んでみるよ」

「君は本物の神様なんだなぁ……」

 ありがとう、と言うや否や顔を覆って肩を震わせ始めた。

 助けられてよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る