第41話 複雑な感情の解決策

 花火大会を終えて、俺と星川も樋口たちと合流して、記念撮影を終えてから、園内のお土産ショップへと向かった。


「ねぇねぇ、これとか可愛くない?」

「あぁ、そうだな」


 お土産選びの際も、星川は俺の隣にピッタリ寄り添っている。

 正直、成川と気まずい空気を耐えるより、星川が隣にいてくれた方が気が楽だった。


「初木さ、これ一緒に買わない?」


 星川が提案してきたのは、富士山とアトラクションが連なったストラップ。

 センスがあるかと言われれば謎だが、今日の思い出を振り返るには丁度いいのかもしれない。


「これ、二人で初めてのお揃いにしよ♪」


 星川が耳元で、そんな甘い言葉を囁いてくる。

 その言葉を受けて、俺は狼狽えてしまう。


「あぁ……そうだな」

「ふふっ、じゃあ決定って事で!」


 星川は嬉しそうな様子でストラップを二つ手に取り、レジへと向かって行く。

 まだ星川にOKを貰ったことが信じられず、なんだか頭がふわふわとしていた。


「はい、これ!」


 包み紙に包まれたストラップを受け取る。


「おう、サンキュ」

「どこに付ける?」

「そうだな……まあ無難にカバンとかか?」

「えへへっ……そうだよね。じゃあ一緒に学校のカバンにつけよ?」

「うん、分かった」


 お互いにスクールバッグにストラップを取り付ける約束をして、俺たちは帰りのバス乗り場へと向かう。

 高速バスが停留所へと到着して、車内へと乗り込んでいく。

 既に辺りは暗闇に包まれているため、バス車内も明かりが比較的暗めに設定されていた。


 座席は、行きと同じ席順に自然と収まる。

 だが行きと違うのは、遊び疲れたからか、ほとんどの奴らが眠りについてしまっているということ。

 星川も隣で舟を漕いでいたので、肩を貸してあげた。

 今は俺の肩を枕代わりにして、星川はスヤスヤと眠りについている。


 斜め後ろの席をちらりと窺うと、廊下側に座る樋口は、腕を組みつつ目を瞑って眠りについていた。

 窓側に座る成川は、一人ボケーっと考え事をしている様子で、窓の外をずっと眺めている。


 後ろを見れば、口をポカンと開きながら、須田さんが豪快にいびきをかきながら夢の中へと落ちていた。

 そして、その隣に座る古瀬に視線を向けると、バッチリと目が合ってしまう。


 別にやましいことはない。

 けれど何故か、俺は古瀬に対して後ろめたいという感情が沸き上がってきてしまった。

 古瀬は、何事もなかったかのようにすっと視線を外して、どこか遠くを見つめてしまう。

 俺の胸に引っ掛かってしまったのは、恐らく、彼女と約束したあの日の出来事が尾を引いているから。


 特別な関係性の答えを知りたい。


 それを探し出すため、二人でこれからも仲良くやって行こうと、誓い合ったばかりだっなのに……。


 俺が星川に告白して、まさかのOKを貰ってしまったことで、面倒くさい状況になってしまったのだ。


 少なくとも、これだけ気まずい雰囲気になるということは、お互いに異性として、多少なりとも意識している部分があったということだろう。

 だが、俺の口からそれを言うことは出来ない。


 星川に告白した身で、実は古瀬の事を、異性として意識していたことに気づいたなんて言ったら、不誠実極まりないのだから。


 俺は無意識に頭を抱えてしまう。

 あぁ……どうしてこんな面倒なことになっちまったんだ。

 こんなはずじゃなかったのに。


 星川に振られて、成川も傷つくことなく、俺だけが被害を被って、平和な日常が戻ってくるはずだったのに、変な風にこじれて悪い方向へと傾いてしまった。


「あぁ……死にたい」


 穴があったら入りたい。

 一体どうしたら、この最大の誤解を解くことが出来るのか?


 帰りのバスの中で考えを巡らせてみたものの、俺の頭の中に浮かんでくるのは、星川が告白に対してOKをしてくれた時の嬉しそうな表情ばかり。

 俺の中で、星川から告白を受け入れてもらえてうれしい感情と、古瀬に対する後ろめたい感情が入り混じって、訳が分からなくなってしまう。

 自分の中で、この状況に対する解決策を探すため、思考を巡らせてみるものの、いい案が思いつくことはなかった。





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