第30話 トンデミナイ?
入場してから、俺たちは計画通り、初めに震撼迷路のチケットを人数分購入して、待ち時間がそれほどないアトラクションから乗ることにする。
まず最初に向かったのは、『トンデミナイ?』というアトラクション。
ピザ型の円盤になった乗り物がくるくると回転しながら、振り子のように上下左右へと振り回されるという、
絶叫度★☆☆☆☆
絶叫系に乗るのであれば、まず手慣らしに乗ることをお勧め。
一度に五十人乗れることから、回転率も比較的高い人気アトラクションでもある。
てか待って、これで絶叫度★1なの⁉
注意書きには
・137センチ以下の人と65歳以上の人は乗れません。
・靴を脱いでいただくことを推奨、眼鏡は外してください。
・荷物はコインロッカーへ預けてください
と書かれている。
待って、初見からいきなり荷物預けるとか、どんだけ難易度爆上げなの?
基本的に命の危険あるやん富士ランドのアトラクション……。
改めて、凄いところに来てしまったのだなと実感しているうちに、トンデミナイ?の入場が開始する。
俺たちはロッカーに荷物を預けて、横一列に六人全員が並ぶ。
並び順は、樋口、須田、成川、星川、俺、古瀬の順番。
『それでは、いってらっしゃーい!』
係りのお姉さんの明るい声と共に、マシーンがぐるぐると回転を始めた。
周りの乗客からは、ざわざわと期待と恐怖の入り混じった声が聞こえてくる。
ちなみに、椅子に座ってはいるものの、足は宙ぶらりんで。胴体部分にはガッチリと安全バーが固定されている状態。
俺が動きに身を任せて、外の景色を眺めていると、不意に左手を握られた。
見れば、古瀬が不安げな視線を向けてきている。
「大丈夫だよ。ちゃんと固定されてるから」
「本当だよね? 突然マシンが鉄柱部分からポキって折れたりしないよね⁉」
「しないっての」
「絶対に放さないでね!」
「分かった、分かった。離さないよ」
若干距離が離れていたものの、俺は手を伸ばして、古瀬の手をがっちりと握り締めてあげる。
徐々に振れ幅が大きくなっていくほど、古瀬から握られる手の力も強くなっていく。
とそこで、今度は反対側の手を握られた。
振り返れば、星川が楽しそうに目を輝かせながらこちらを見つめてきていた。
「凄い! 楽しいねこれ!」
「あぁ、そうだな!」
「浮遊感ヤバイ! キャー!」
古瀬とは対照的に、星川は叫び声を上げながら、アトラクションを思う存分に楽しんでいる。
二人とも、クラスにいるときは脚光を浴びる美少女なのに、こうも反応が変わるものなんだなとおかしくなってしまう。
結局、右からは星川の叫び声、左からは古瀬の声にならない悲鳴が聞こえてきて、ちょっとだけ彼女たちの秘密を知ってしまったような優越感に浸りながら、アトラクションを楽しむのであった。
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