教室で
伊吹 累
教室で
頭の中では、何度もあなたとの会話をシュミレーションしています。
そこでは私は愛想が良くて、素直でいられるんです。
だけどもあなたに本当に出会ってしまった時、たくさん用意していた言葉は指の間から掬いきれずにこぼれ落ちて、話しかけられた時にはすっかり両手は乾ききっています。
私の口は、私の頭と繋がっていないように勝手に喋り出します。
そんな口だからたった二文字さえも言えるはずがありません。
勇気がないというよりは、告白であれ謝罪であれ、言葉にすると気持ちが軽く見えてしまうように思えるので。それもまた意味のない意地っ張りです。
でも、あと一ヶ月、二人で放課後の空間を共有できる。それができるのは私の特権。
やっぱり意地っ張りというより臆病ですね。猶予はつくけれど壊れない関係が一番、安心できます。
本や漫画じゃないんだから、「起承」までで構わないと、口に喋らせておきながら、私の脳は、窓から夕日が差してあなたの横顔を照らすこの瞬間を噛み締めています。
教室で 伊吹 累 @Ento-Esam
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