第25話 面白くなってきた
「え? な、なんで? わ、私、ちゃんと扉が開かないようにして……」
体を起こしながら、ワタワタと慌てた様子で視線をさまよわせる
「あなた、私たちがお弁当食べてる時、ずっと扉の所にいたよね。最初は気にしないでおこうと思ってたんだけど、なかなか離れようとしないからさ。何かあるのかなって」
天霧さんに近づきながら、テンちゃんはそう尋ねます。先ほどまで手に握られたはずの団扇は、今はもうありませんでした。
「ええ!? 天霧さん、ずっとそこにいたんですか!?」
全然気づきませんでした。といいますか、テンちゃん。一言くらい、僕に何か言ってくれてもよかったのに。
「あ。そ、その……」
「…………」
「…………」
天霧さんは、ばつが悪そうに下を向いてしまいます。ですが、僕とテンちゃんが黙って待っていたせいでしょう。やがて、観念したようにその理由を話し始めました。
「た、
「ふむふむ」
「そ、そしたら、あなたとお弁当食べてて。た、立花君が、誰かとお弁当食べてるなんて珍しいから、ついつい見入っちゃった……です」
「ほうほう」
「…………」
「……あ、それだけ?」
不思議そうな口調で尋ねるテンちゃん。その問いに、天霧さんはぎこちなく頷きます。
何となく。本当に、何となくですが。僕には、天霧さんがまだ何かを隠しているように見えました。きっとテンちゃんも、僕と同じようなことを感じたのではないでしょうか。
「…………」
「…………」
「…………」
僕たちの間に流れる沈黙。屋上に吹く風の音が、先ほど以上に大きく感じられました。
これ、どうすればいいのかな? 二人とも何も言わないし……。よし。ここは、僕が何とかしないと。
「ね、ねえ、天霧さ」「ああ。そういうことかー」
天霧さんに声をかけようとした僕。ですが、そんな僕の言葉を遮るように、テンちゃんが口を開きました。
「いやー。なるほどね」
「……テンちゃん?」
「ふふふのふ。面白くなってきた」
何かに納得したかのように大きく頷くテンちゃん。その口元からは、真っ白な八重歯が顔を覗かせていました。
わけがわからず、僕と天霧さんはそろって首をかしげます。
「ところでさ。あなた、お昼ご飯は食べた?」
「い、一応、食べてる途中です。は、早く立花君を追いかけようって夢中だったので。た、食べてたパン、教室に置いてきてます」
「分かった。じゃあ、それ持ってきて、私たちと一緒にお昼食べよう!」
「……え?」
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