014・隠し場所とアタッシュケース
先が見えない目的地に嫌気が差し始めた頃だった。
前方に何やら建物が見え始める。
するとだんだんと廃れた建物が見えてきた。
「着きましたよ。隠し場所はこの中です」
着いた先は何年か前に潰れたと思われる遊園地である。
立ち入り禁止の札が掲げられているだけで中に入ろうと思えば入れそうだ。
「遊園地か。どうしてこんなところに」
「立地が悪かったと思います。都市部から大分離れていますし、どこにでもあるような平凡な乗り物しかない。潰れて当然です。さぁ、入りますよ」
ロープを潜り、速水は中へ入っていく。
潰れたことは仕方がないが、遊具などそのままの状態で残っているので当時の様子が伺える。経営者は取り壊すこともなく逃げたのだろうか。
人の手が及ばなくなると何とも不気味だ。何か出そうで怖い。
「保高さん。こっちですよ。早く、早く」
速水に呼ばれて向かうとそこはサーカスをしていたと思われる建物があった。
上部に掲げられた看板には『ニャンニャンサーカス』と書かれている。これも当時のままだ。
「猫のサーカス?」
中に入ると観客席と舞台が当時のままだった。
使われていないこともあり、埃や蜘蛛の巣が目立つ。
室内は埃臭い。
「現金は舞台の方です」
「舞台って言っても何もないぞ?」
「サーカスには色々仕掛けが施されているものです。このパネルを捲ると秘密の隠し部屋があるんです。ヨッと」
速水は慣れた手付きで一枚のパネルを捲りあげた。
すると落とし穴のようでまるで地下の秘密基地の構造になっている。
「何の穴だ?」
「おそらく猫を登場させる為の演出用の穴でしょう。この中に猫を入れて餌なんかで誘き寄せて派手に登場させると推測できます」
「なるほど。凝っているんだな」
「さぁ、私が下から上に挙げますから保高さんはそれを受け取って下さい」
「分かった」
速水は地下にその身を滑り込ませてアタッシュケースをバケツリレー方式で僕が受け取る。
確かにここならば誰にも見つからずに隠し通せられる。相変わらず速水は抜け目がない。完璧だ。
アタッシュケースは全部で五つ。一つ一億が収められていると思うと緊張が走る。
「ところでどうやってここまで運んだんだ? 計算上、一億円で重さが十キロ。五億円で五十キロの重さだ。一人で運べる重さじゃないと思うが」
「あぁ、それはですね。リアカーに乗せてセカセカと押してきました。あの道のりはキツかったです」
「根性あるな。お前」
「それを含めてここまで苦労しました。やっと私のお金になる日が来ました」
「私たちだろ、速水。早く見せてくれよ」
「慌てない。慌てない。心の準備はいいですか? では現金とご対面。せーの、ドン!」
速水がアタッシュケースを開けた瞬間、僕が目にしたものは衝撃のものだった。
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