後遺症
次の日、ステラが目を覚ますと身体の痛みは嘘みたいに消えていた。カナデ曰く、マギクスの活性化による強化だから反動はあるが、後に長引くようなものでは無いから安心していいそうだ。
一日以上ベッドの上に固定されていた為に全く動けなかったステラは、ベッドから飛び起きるやいなや家の外に飛び出して動き回っている。身体がしっかり動くかどうかを確かめていた彼女はあることに気づき、後ろでその様子を見ていたカナデに問いかける。
「カナデ。なんか前よりも身体が軽いし力の巡りもとても良くなってる気がするんだけど、なんでだろう。これも
「『
ちなみにステラがカナデのマギクスの名前を適当に言っているのは、わざとではなく本当に覚えていないからである。幼少期から母シラベの影響もあって音楽に触れていたカナデに対して、ステラは両親が残した本に夢中だった。それ故に音楽の知識そのものに疎いステラは、その音楽から着想を得ているカナデのマギクスを感覚的に扱っているのだ。
「だったらそれを何回も使ってギリギリまで戦えば、どこまでも強くなれるのかな。自分の身体ながら興味深いな……」
「はぁ……。私はやらないわよ。今回はああでもしないとレグルスを倒せなかったから使っただけなんだから。いくら数日寝込めば全快するって言ったって、あんな劇薬みたいな強化頻繁にやるもんじゃないわ。体に毒よ」
カナデの『
「無理して強くならなくてもいいのよ。アンタの目的はそこじゃないんだからね」
「確かにそうだね……。無理しない別の方法を探ろう」
「そういえば『
「あれね。『
ステラ自身は、ある程度自分がどこまで自分のマギクスを制御出来るかは把握しているつもりである。今回の後遺症でその制御領域が広がった事を加味しても、『
「そうだわ。ステラに伝えとく事があったのよ。これ見なさい」
「なになに」
手渡されたのは例の地図。数日前にこの村で確認した際、白紙になっていた為に使い物にならなくなっていた地図だった。
ステラは地図を手に取りそれを広げる。
「あぁ……そういう事か」
消えていた中身がごく一部ではあるが戻っている。地図上の二十一ある印のうちの一つ。その周りのみが記載され、ご丁寧に「レギュラス」と地名まで入っている。
「この地図と私の
「恐らくね。アンタが起きてこないからふと思い出して見てみたらこれよ」
ステラはワクワクするような目つきで地図を眺めている。この先に起こることに勘づいたような顔をして。
そんな様子を知ってか知らずか、カナデが何かに気付いたような声を上げる。正しくは気付いてしまったような、だが。
「ねぇ、出来れば否定して欲しいんだけど、もしかして私たちってこの先もレグルスみたいなのと戦わなきゃいけないの?」
「え、今気づいたの? 多分そうだと思うよ」
「気付きたくなかった……。こんなの命がいくつあっても足りないじゃない」
カナデは項垂れ、固まってしまう。この世の終わりみたいな顔をしたカナデを見て、ステラはケラケラと笑う。
「面白い顔になってるよカナデ。まぁ安心しなって。少なくともレグルスは中身はともかく自我があった。つまり対話は出来るんだよ。だから必ずしも戦わなきゃいけないなんて事はないはずだよ」
「だと良いのだけど……」
「どちらにしても印はあと二十も残ってるんだ。希望はあった方が良いよ」
必ずしも戦わなくても良いという言葉に少しの希望を見出したのか、カナデの様子が元に戻る。
「でもそもそもステラの目的地がその地図の『最果て』なら、なにも全部回らなくてもある程度地図が埋まれば行けるんじゃないの?」
「分かってないなぁカナデは。これはロマンなんだよ。私たちはこの二十一の印がなんなのかも分かってない。それはきっとこの場所を巡っていくうちに分かると思ってる。何が出てくるかは分からないけど、ワクワクするでしょ? それに、この地図と
「その気持ちは分からないでもないわ。ま、もう約束しちゃったしね、アンタに着いていくって」
「でさ、一つ考えたんだけど」
「なによ」
「これから先、もう二人でやってくのは難しいと思うんだよね」
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