ならず者を撃退せよ
振り降ろされる刃がステラの眼前に迫る。武器の持ち主は確実に当たると確信して剣を振るっていたが、その軌道を目で追っていたステラにはかすりもせずに避けられてしまう。そのまま勢い余ってバランスを崩した男は、避けたステラに背後から蹴飛ばされ転倒する。そこを隙だと別の男が斬り掛かり、また避けられ、転ばされる。
十人ほどの男がステラを取り囲んで襲い始めて、既に幾許かの時間が経っていたが、彼女には一太刀すらまともに当たる事無く、当のステラは笑顔でひらひらと舞っていた。目の前で繰り広げられる意味不明な光景に腰が抜けてしまった老人は、少し離れた所からステラの奇行を見ていた。彼の目には、ステラがどれだけギリギリまで引き付けて避けられるかで遊んでいるようにも見えていた。
「ほらほら、そんなゆっくりな剣じゃ一生かかっても私には当たらないよっ」
火に油を注ぐように、挑発しながら右に左にと剣を避け続けるステラ。男たちは躍起になって斬り掛かるが、もはや剣が避けていくかのように当たらない。すると、業を煮やしたのか、今まで離れて見ていたリーダー風の男懐から投げナイフを取り出す。苛立っているのか、その額には青筋が浮かんでいる。その様子にステラは気づくことは無く、剣を避けたそのタイミング、動作と動作の瞬間を狙って、リーダー風の男はナイフを投げる。
ステラは何も、物理法則を無視して回避している訳ではなく、また身体を無理に動かしている訳でもない。彼女はマギクスを使えるが、身体動作にはあまり活かせていないのだ。なので踏み込みの瞬間に狙われたからと言って、即座に次の足を出して回避ができる訳では無いのである。
ヒュン、と空気を裂いた音が走る。空を切ったナイフはステラへと真っ直ぐ向かい、そして衝突とともに金属音が鳴った。
「なっ……!」
「あっぶなかった……」
驚きの声が二つあがる。当然ながらステラは金属製では無いので、仮にナイフが直撃しても金属音が響くことは無い。彼女の身を守り、ナイフを弾いたのは、その手にある銃、『
「って傷とか付いてないよね!?」
ステラは慌てて『
「そろそろ良いかな。準備運動も出来たことだし、話も聞けてないしね」
「囲んで同時に攻撃しろ! 隙間がなきゃあのガキも避けられねぇはずだ!」
「それはもう、見飽きた……よっと!」
ステラは一瞬力を溜めると、自らを取り巻く包囲網の一角に突っ込んでいく。ステラ目掛けて落ちてくる刃を『
「とりあえず大人しくしてもらうよ! 『
ブォンと空気の震える音が鳴り、ステラの持つ『
ステラは男たちへと一気に近づくと、『
「かなり切れ味が良いね。『
この光景を目にした男たちも、流石にたじろいでしまう。生半な力では折る事も出来ない刀を簡単に斬っていくステラの黒刃は、もしそれが身体に向けられたらと思わせるだけで強い制圧力を持っていたと言えるだろう。
そして、ステラが足を止め、一息ついた頃には、男たちは武器を失ってオロオロと立ち尽くす事しか出来なくなっていた。
「これで少しは大人しくしてくれるかな? で、後はあなただけだね」
リーダー風の男へ『
「チッ、こんなガキに捕まってたまるかよ!」
リーダー風の男はポケットから素早くボールのようなものを取り出し、地面に投げつける。途端、割れたボールから煙が飛び出し、辺りに充満していく。運悪く風が吹いてきて、煙を顔にモロに食らったステラは咳き込み、男の姿を見失ってしまう。
しばらくして煙が晴れると、そこにはリーダー風の男も、武器を失って突っ立ってた男たちも、忽然と姿を消していた。
「うわー、逃がしちゃった」
何か痕跡は無いか探すステラは、あ、と思い出したようにならず者たちに絡まれていた老人の元へ向かう。老人を巻き込まないよう少しずつ離れながら戦闘していた為、離れてしまったのだ。しばらく歩いて老人のいた場所に戻ると、そこには老人といつの間に来たのかカナデが座っていた。
戻ってきたステラを見た老人は開口一番言い放つ。
「頼む! 村を救ってくれ!」
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