第16話 元ヤンにアプローチする(1)



烈司さんのバイクに揺られること30分。


おしゃれなお店が並んでいる場所を走っていた。




「もう着くぞ、凛たん。」


「は~い!楽しみです!」




烈司さんからのお知らせに、嬉しさが増す。




「あの、ありがとうございます、烈司さん!僕、一度瑞希お兄ちゃんの職場に行ってみたくて~」


「どういたしまして。あんまりにも、凛たんが寂しそうに見送るからよ~ついついお節介しちまった。ちょっとは、俺のこと好きになったかな~?」



「もちろんです!烈司さん大好きですっ♪」


(瑞希お兄ちゃんには負けるけど♪)




〔★順位はゆらがない★〕





そんな思いで、バイクのシートから手を離して烈司さんの体へとギュッと抱き付く。




ギギャギャ!



「うっ!?」


「え??」




途端に、バイクのバランスが崩れた。




「ど、どうしました!?」


「あ、いや!・・・・急だったんで、ビビった。」


「?なにがです?」


「うっ!?なにって~・・・・ああ、いや。なんでもないわ。」




そう言ってごまかす姿に、ニコチンがきれて調子が悪いのかな?と思う。




「烈司さん、先に煙草買いましょうか?」


「え!?ああ、いや・・・そんな急いでねぇーから・・・・」


「そうですか?」


「俺のことはいいって・・・・」


「わかりました。ところで、烈司さん!瑞希お兄ちゃんのお店はどこですか!?」


「って!?少しは気にしねぇーのかよ?」


「え?なにがです?」


「くっ!なんでもねぇーよ!たく・・・マジで瑞希中毒だな~?えーと、瑞希の店は~」


「瑞希お兄ちゃんのお店は!?」


「あれ。」






そう言って顎を動かす。


同時に、バイクの動きも止まった。





「こ、ここですか!?」


「そう。これが、瑞希ちゃんの職場。」


「ちょ・・・・」


(超・オシャレで流行ってる感がある―――――――!!)





外から見ただけでも、お店の中は人口密度100%に近い。






「こ・・・・ここに瑞希お兄ちゃんが・・・・!?」


「そうだな。」





気圧されそうで、敷居が高く思えたけど。






「素敵!イメージ通りですね!?」


「イメージ通りなの!?」




〔★凛にとってイメージ通りだ★〕





店舗兼の自宅とは違った良い雰囲気があるお店だった。


モニカちゃんもセンスがあるけど、ここは外国のカフェみたいで素敵。




「すごいすごい!さすが瑞希お兄ちゃん~お店を選ぶ目が、見る目ありますね~!」


「ははは!じゃあ、瑞希に言ってやれ。喜ぶぞ~?」


「是非!」




嬉しくて、バイクの後ろに乗ったまま、身を乗り出す。


目を動かして探す。




「あ~人が多くて瑞希お兄ちゃんが見えない!」


「そりゃあ、道路からのぞこうってのが、無理あるよー?ほら、降りな。」


「え?」


「せっかくだから、突撃してやろうぜ?」


「ええ!?」



(ナイス!それは良い考え!)




烈司さんの提案に、飛びつきかけて我に返る。




「いや、ダメ!ダメですよ・・・・」


「なーんで?瑞希会いたくないのか?」


「会いたいですけど・・・・そんなことしたら、怒られませんか?お仕事の邪魔になるって・・・・?」


「お金払って、客として来ればいいじゃんか?心配しなくても、俺が凛たんの分をおごってやる。」




そう言うと、ポンと軽く私の肩を叩く烈司さん。




「さぁ、降りな。これは先輩命令だ。瑞希のところに行くぞ?」


「烈司さん・・・・ありがとうございます・・・!」




感動もあって、素早く下りて敬礼する。


それに小さく笑ってから烈司さんは言った。




「はいはい、よろしく。じゃあさ、俺、パーキングにバイク止めてくるから。」


「わかりました!」


「先に、店入ってればいいから。椅子の上で、いい子で待ってろよ?」


「わかりました!!」


「あとでな~」




手を伸ばして、私の頭をなでると、慣れた動きで行ってしまった。






「・・・・・さてと。」





烈司さんがいなくなったところで、くるりと振り返る。


瑞希お兄ちゃんがいるお店。


看板が出ていて、アルファベット文字が並んでいる。


ガラス張りになっているので、外から店内を覗くことができる。


ピカピカで透明な壁まで行き、ガラス越しにそっと覗く。


窓際のお客さんに怪しまれないように、さりげない通行人をよそおって店内を見る。


どのお客さんも、のんびりしている。


忙しそうなのは店員さんぐらい。


あわただしく働いている人達。





(いたっ!)





その中に、お目当ての方がいた。




(きゃわぁーん♪瑞希おにいちゃーん!!)




いつものギャルソンエプロンとは違うエプロン。


スタイリッシュで洗練されていて、すごく似合う!




(女の子と並んでいても可愛い!)




同僚らしい女子と、真面目な顔で話しこんでいる姿。


やりとりは、まさに主役とエキストラ!




〔★そこはわき役というべきである★〕





あんなにたくさんいるスタッフさんの中で、瑞希お兄ちゃんはよく目立っていた。


まるで、ハンバーグと添え物の野菜ぐらい違う♪


店員さん達がビーズの玉なら、瑞希お兄ちゃんは宝石よ!




〔★周りに失礼だ★〕





恋する乙女モードで瑞希お兄ちゃんに見惚(みと)れてしまう。





(あああ・・・本当にカッコいい!ヤバい!素敵!神パネェ!体のラインも出ていて、すごくいい・・・・!)





私はあの腕に、いつも抱かれているのね・・・


あの綺麗な手に、ナデナデされてるのね・・・


胸板が・・・ああ、セクシー・・・・


腰のラインが最高・・・・!


ステキなヒップライン♪




〔★完全にセクハラである★〕





「うふふふ~瑞希おにいちゃーん・・・・!!」




好きな人の意外な一面が見れて、浮かれていた。


どれぐらい浮かれてたかというと・・・・




「な、なにあの子?」


「うっ!?ガラスに張り付いてるぜ・・・?」


「おなかすいてるのかなぁー?」


「バカ、関わるなっ!」




〔★不審者になっている★〕




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