第15話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(15)




「そ、そんなぁ!!」



(あんまりだ!一週間ぶりなのに、あんまりだ!)



「い、行っちゃうの、瑞希お兄ちゃん!?」





気づけば、追いすがっていた。




「きょ、今日お仕事じゃないですよね!?なのに、なぜ!?」


「うっ・・・・だから、1人病欠になったから足りないんだよ。」


「病欠!?」


「そう。忙しいから、休みのやつが代わりをしなきゃダメだろう?」


「ダメじゃないよ!サッカーでも、レットカード受けて退場した人の代わりを補充しないじゃない!?」


「スゲー例えだな。」




〔★凛も必死だった★〕





「わがまま言うな、凛。なんかお土産買ってきてやる。」


「で、でも!」


「俺、聞き分けの良い、素直な子が好きなんだけどなぁ~」


「うっ!?」



(あ、悪魔!)




ニヤリと笑い菜が言う姿を見て思う。



この人は小悪魔だ!


そんな顔されたら、そんなこと言われたら!




(ますます惚れちゃうジャーン!!)




「凛、返事は?」


「うっうっ・・・・行ってらっしゃいませ・・・・!」


「よいよし、いい子だ!じゃあな、凛!烈司、後任せたぞ~?」


「はいはい、行ってこーい。」



「大河も高千穂も、ゆっくりしていけよー!またな!」




そう言うと、笑顔を残して瑞希お兄ちゃんは出て行ってしまった。







「瑞希お兄ちゃん・・・・クスン。」


「元気出せよ、凛?」




〔★凛はがっかりしている★〕





「マジすか、瑞希さん・・・今日休みだから長く一緒に入れると・・・」


「オメーもかよ!?大河!?」




〔★大河もがっかりしていた★〕





(お兄ちゃんがいなくなったパーティーは、お箸やスプーンなしでご飯を食べるようなもの・・・)




〔★それらを使わない国もある★〕




「あ、煙草きれた。」




お葬式ムードの私の側で、烈司さんがつぶやく。


そして、体中のポケットに手を入れた後で言った。




「あーあ・・・これで最後だったか~俺、ちょっとタバコ買ってくるわ。ついでに、買い出ししてくる。このまま宴会したら、今ある食料が尽きる。」




そう言いながら立ち上がる烈司さん。


そんな彼と目があう。






「凛たん、ちょっと付き合いな。」


「え?」






ご指名を受け、腕をつかまれ、引き起こされた。




「ちょっと~凛ちゃん連れてくことないでしょう、れーちゃん?」




そんな私のズボンを、モニカちゃんがひっぱる。


それに気づいた烈司さんが、モニカちゃんを見ながら言った。



「別に意地悪してねぇー是?瑞希が凛たんにこの部屋使わせるなら、周辺の店のことも教えておいた方がいいだろう?お一人様1つまでっていう商品飼う時に便利?」


「同感だな。」


「獅子島さん?」




烈司さんの言葉に、生ハムを食べていた獅子島さんが言う。




「暮らすとまではいかんが、泊めてやるならいろいろ使えた方がいい。少しでも利益がある方がいいだろう。」


「損得勘定ですか、獅子島さん!?」




〔★利用される予感がした★〕





「俺の煙草がキレたのも何かの縁だ。いいだろう、モニカ?」


「それはわかるけどぉ~!」




烈司さんや獅子島さんの話に、まだ納得できなさそうなモニカちゃんがごねる。


これにヘビースモーカーの先輩が言った。




「それによ~ちょっと考えてみろよ、モニカ。」


「なにを?」


「凛たんが、よいしょよいしょと運んできた食料を、モニカは食べたいとか思ないかー?『モニカちゃん、イチゴが好きなんだねー♪』とか言いながら、オメーのことを考えて買ってきた品をさ~?」


「食べたいわね。」


「モニカちゃん!?」




真面目に烈司さんが聞けば、真面目に答えるオネェさん。




「ヤバい!イイじゃないそれ!子リスがどんぐり運ぶみたいで、可愛い!萌え~!!」


「ちょ、モニカ先輩!?」


「顔が危ないんすけど、モニカさん!?」


「いいわ!OK!行っておいで、凛ちゃーん!」


「わっ!?」




そう言って、烈司さんの方へと後押ししてくれるオネェさん。





(モニカちゃん・・・・イチゴが好きなんだ・・・・)





〔★モニカは納得した★〕





「凛ちゃん、イチゴ買ってきて、イチゴ!練乳かけても、モニカちゃんのお口に運んで~!」


「わ・・・・わかりました。」


「きゃは!やったぁ~!」


「はあ!?いいのかよ、凛!?」


「うん?モニカちゃんにはお世話になってるし。」


「へぇ~!?お前お世話になった相手なら、誰にでもできんのかぁ・・・!?」


「ちょ、顔が怖いよ、カンナさん!?」


「はいはい。話は後にしろ、お子ちゃまたち~他にいるもないか、オメーら?」




ニラむカンナさんを私から引きはがしながら、烈司さんが聞く。


それに答える声が、すぐに上がった。




「わははははは!あるぞー!日本酒買って来い!芋焼酎も忘れんな!!」


「未成年が酒を買えるわけないだろう、馬鹿者め。凛道、クリアファイルを買って来い。ついでに、クイックルワイパーもだ。」


「百鬼さんはともかく、獅子島さんは、わかりました。」


「コラ、俺様は無視か!?凛助!」


「ははは!皇助の酒は俺が買ってきてやるよ!じゃーな。」




そう言うと、私の肩を抱いてさっさと部屋から出る烈司さん。


ドアを閉め、廊下を数歩進んだところで聞いた。





「あの・・・どこまで買い物に行くんですか?」


「近所だよ、近所。単車飛ばせばすぐだ。」


「そうですか。じゃあ、烈司さんのバイクについて行きますね。」


「ついて行くって、凛たん。俺、凛たんを後ろに乗せるつもりなんだけど?」


「え?後ろですか?」


「そうそう。」


「でも、買い物したら荷物が多くなるから、2台に分けた方が~・・・」


「いや、瑞希にも持たせるからいいって。」



「へ!?瑞希お兄ちゃん?」




突然出てきた瑞希お兄ちゃんの名前。


どういう意味かと聞く前に、彼は言った。





「凛たん、瑞希の職場に行ったことないだろう?連れてってやろうと思ってなぁ~」


「えっ!?」


「その後に買い物をしようと思ったんだが~どうしようか、4代目?」





ニヒルな笑みで、聞いてくる相手。






「・・・・もしかして、僕を連れ出してくれるために・・・・?」




(あんなお芝居を?)





「いや、煙草がないのはマジだ?ニコチンキレると、俺アブナイから♪」






そう言って、茶目っ気たっぷりに空になった煙草の箱を見せてくれる烈司さん。




「で・・・どうする?行くか、行かないか?」




私の耳元に顔を近づけると、小さな小さな声で問いかける男前。


まるで、内緒話をしてるようで・・・


だから私も、みんなに聞こえないような小声で答えた。





「行きます♪行ってみたいです・・・・!」


「はいはい、了解♪じゃあ、烈司さんとデートな?」


「はいっ♪」




さすが、瑞希お兄ちゃんが頼るお方♪





(これで瑞希お兄ちゃんに会えます!ありがとうございます!)





優しい声と顔で頭をなでてくる烈司さんに、心の中でも感謝した。








~カオス上等!ヤンキー1年生の日々~完~







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る