第14話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(14)
「ありがとうカンナさん・・・僕、頑張る。誘拐犯に負けない・・・!」
「・・・・よかったな、凛。いいツレじゃねぇーか?」
カンナさんにお礼を言えば、コンと頭を小突かれた。
つついてきたのは、カンナさんを間に挟んだお隣様。
「瑞希お兄ちゃん・・・・」
「よかったなぁ~りーん?高千穂と仲良くなれそうで~?」
好きな人の顔は、大体がときめく。
でも、時々だけど、今みたいにムカつく時がある。
「お兄ちゃん・・・!?なんか、顔がいつもと違うんですけど・・・?」
「んー?そうか?俺は、凛の幸せを願ってるだけだぞー?あはははは~!」
(どこがっ!?)
そのにやけた顔!
なにか企んでいる表情!
(どうみても、僕が男の子としてカンナさんを気にしてるって思ってる顔じゃないか!?)
〔★ひどい誤解だった★〕
(これでも私、友達と遊んでる方が好きな男の子設定でいるのに~!)
よりによって、瑞希お兄ちゃんにそう思われるなんて最低!
というか、瑞希お兄ちゃんの鈍感!
「なんだよ、凛?何ムキになってんだ~?」
「ムキになってないよ!」
「そうやって、すねるところが怪しいんぁ~?」
「すねてない!怪しくない!」
「あははは!わかった、わかった。つーことで、これからも凛をよろしくな、高千穂?」
「なにもわかってませんよ!?」
〔★凛の意見はスルーされた★〕
怒る私の頭を引き寄せながら、瑞希お兄ちゃんが笑顔で言う。
間にいるカンナさんへと、にこやかに告げる。
「こいつ、真面目すぎだけど、おもしろいところあるから!遠慮はいらねぇーから、ドンドンかまってやってくれ!」
「瑞希お兄ちゃん!?」
「かまっ・・・!?べ、別にあたしはそんなつもりはなくて~違うっつーかー・・・!」
「俺は違うけどな。」
「うるせぇぞ、大河!」
「あいてぇ!?」
円城寺君の言葉に、照れ隠しをするようにカンナさんがその頭部を叩く。
「そういうわけだから、凛!ダチのよしみで番号交換するぞ!スマホは教えろ!」
「え?スマホ?」
向き直り、開き直るような態度でカンナさんが私に言う。
「そうだよ!助けてやるにしても、凛からのSOSがないと行ってやれないだろう!?」
「えーと・・・僕が助けを呼ぶ方向で話が進んでるんですねー?」
「よかった~凛!高千穂が積極的で?」
「瑞希お兄ちゃん、変な顔と誤解をしないでください!」
「無視しろ、凛!ほら、早く教えろ。」
「え?う、うん!えーと・・・・アドレスは・・・・」
持ってきたスマホを取り出す。
瑞希お兄ちゃん以外、まだLINEはしてない。
自分のアドレスを探していれば、覗き込んできたカンナさんが言う。。
「おいおい、なに捜索してんだよー?電話番号教えてくれればいいって。」
「え?それでいいの?」
「電話がわかれば、大体はどうにかなるだろう?」
「じゃあ、電話番号だけを~」
「待て!まぁ・・・・せっかくだから、番号と一緒にアドレスも教えな。せっかく、探してくれてたみたいだしな。」
「うん、わかった。」
そう言われ、消そうとした画面を維持する。
「えーと・・・アドレスは・・・あった!」
そして見つけ出した。
まだ覚えてない自分のアドレスを。
「お?どれよ?」
「これだよ、カンナさん。」
「どれどれ~――――――――――って!?なんだこれ!?」
私のメアドを見ながらカンナさんが叫ぶ。
「この統一感のないアルファベットと数字の組み合わせ・・・・初期設定のままじゃねぇーか!?」
「うん、そうだよ。」
〔★変えてなかった★〕
「そうだよって・・・なんで変えてねぇのぉ!?買ったばっかりかよ!?」
「そうでもないよ。僕のところに来て結構経つし~カンナさんも言ったじゃない?」
「なにを!?」
まだ変えてないアドレスを見ているカンナさんに言う。
「番号さえあれば何でもできるって♪」
「確かに言ったけどっ!!?」
〔★言い返せない理屈だった★〕
(というのは、建前で♪)
変えるわけないじゃーん?
瑞希お兄ちゃんが私のために与えて下さったスマホだよ?
一度は、メアドを変えようと思ったけど、瑞希お兄ちゃんからもらったものに手を加えるってことが出来なくて~
むしろ、自然のままの形を維持した方がいいんじゃないかって気づいたの!
〔★瑞希の知らない『重い愛』だった★〕
「だから、変えなくていいかなぁ~と思って。」
「よくねぇよ!?覚えにくいわっ!そうですよね、真田先輩!」
「いや待てよ・・・・初期設定の方が、迷惑メールがくる確率もないから、実はそっちの方がいいんじゃねぇか・・・?」
「なに納得してんすか!?」
「よし、交換完了~!」
「あ、コラ凛!いつの間に~!?」
カンナさんがツッコミを入れてる間に、彼女の番号をアドレス帳に登録する。
「僕のアドレス、SMSでカンナさんに送るね。えへへへ~瑞希お兄ちゃん達以外で、初めてだよ~」
「くっ・・・・!無害な顔で言いやがって~早く送れ!」
「うん、待って!今すぐ、初メールを~」
カンナさんへ送ろうとした時だった。
チャンチャー、チャララー♪
誰かの携帯が鳴る。
「誰?」
「・・・俺だ。」
瑞希お兄ちゃんだった。
「わりぃな、凛。」
「え?」
そう言って私の頭をなでながら立ち上がる。
部屋の外へと出て行ってしまった。
「なんだろう・・・?」
立ち去る時、少し困ったような表情だった。
(なにか、悪いことでもあったのかな・・・・?)
不安な私の側に、白い煙がふわっと漂ってきた。
「職場だろう。」
「烈司さん!?」
そう言いながら、煙草を吸う彼もまた、困った顔をしていた。
「凛たんには残念なお知らせかもなー?」
「え・・・・?」
烈司さんが告げたのと、部屋のドアが開いたのは同時だった。
「凛、悪い!」
そう言って顔をのぞかせたのは、瑞希お兄ちゃん。
「ど、どうしました!?」
「いや・・・実はさー・・・・・」
私の問いに、気まずい表情で彼は言った。
「ちょっと、職場にヘルプで行くことになって・・・」
「え?」
「今すぐ来てほしいらしいんだわ・・・・」
(・・・・・・今すぐ来てってことは・・・・?)
「俺、ここでぬけるから!あとは、オメーらで好きにしてくれ。」
「っ・・・・・ええ――――――――――――――!?」
(この場からいなくなっちゃうってこと!)
〔★凛に痛恨の一撃、ダメージが大きい★〕
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