第11話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(11)
「オチもなにも、俺らが話す前に、毎回オメーらが先に来るんだろう?」
「はあ!?あたしらのせいだって言うんすか、真田先輩!?」
「え!?待って、待ってカンナさん!瑞希お兄ちゃんも!」
2人を止めながら聞いた。
「それ・・・・僕に関することですか・・・?」
「・・・・まぁな。」
この質問に、答えたのは瑞希お兄ちゃん。
「今日、大河と高千穂が来たのも、そこら辺が理由だろう・・・。」
「えっ!?僕のところに、遊びに来てくれたんじゃないんですか?」
「誰がオメーと遊ぶか馬鹿野郎!!冗談はカンナだけにしとけっ!」
「わははははは!冗談みてーに寝技決まるぜ~!」
「ぐえ!?ちょ、皇助さん、ギブギブ!ギーブッ!!」
私の言葉に、百鬼と合体している円城寺君が、床をバンバン叩きながらうなる。
「えーと・・・つまり、どういうことですか、瑞希お兄ちゃん?」
「俺をスルーするな、凛道!」
「うるせぇ、焼きもち妬きの馬鹿助が!つーことで、あたしが代表して話すわ。」
「カンナさん!」
「いいっすよね、真田先輩?」
「・・・・ああ。元ヤンよりも、現役ヤンキーの方が、事情に詳しいからな。」
「取引成立っすね!?じゃ、失礼しまーす!」
「カ、カンナさんっ!?」
そう言って笑うと、私と瑞希お兄ちゃんの間に割り込んで座るカンナさん。
(なんでこっち!?)
割り込まれたことにムカッとしたけど、理由はわかった。
「あらあら、大胆ね~高千穂ちゃん。」
「・・・・。」
私の反対隣には、モニカちゃんが座っていた。
カンナさんからすれば、私とモニカちゃんの間に割り込むより、瑞希お兄ちゃんとの間に割り込んだ方が安全と判断したようだ。
(だからと言って、割り込まれたことは許さないけどね・・・・!)
〔★凛は根に持った★〕
完全に腰を下ろしたところで、カンナさんは話はじめた。
「凛、SHIELD(しーるど)は覚えてるか?」
「え?何のゲームですか?」
「二次元の話じゃねぇーよ!三次元の問題だ!」
「三次元?」
「凛さ、大河に弁当届けた時に遭遇しただろう?」
「円城寺君にお弁当・・・・?」
口にして思い出す。
「もしかして・・・・東山高校の3年生のこと?」
(先々代共々、瑞希お兄ちゃんを侮辱したばかりか、私が東山高校に殴り込みをしたってデマを流した奴ら!)
〔★悪い思い出しかなかった★〕
「やっと思い出した?そうだよ、尾村が6代目してたSHIELDのことだよ。」
「出来れば思い出したくなかったです。困るなぁ~せっかく忘れてたのに・・・・」
「おいおい、意識して忘れてたのかよ!?」
「だって、瑞希お兄ちゃんを侮辱した人達だよ?もちろん、解散はしてますよね?そのことを知らせに来てくれたんですね?」
「まだだよ!つーか、そんなどうでもいいことを、言いに来るわけねぇだろう!?」
「いや、肝心ですよ。龍星軍の名において、解散まで見届けないと・・・!」
「どんだけ恨みが深いんだよ、オメーは!?」
「凛、俺のことはいいんだぜ?オメーが気にしなくても・・・。」
「だめです、瑞希お兄ちゃん!僕の自慢の兄ちゃんを悪く言われるのは嫌なんです!だって、お兄ちゃんが大好きだから・・・・」
「凛・・・!」
「瑞希お兄ちゃん・・・!」
「すんません・・・あたしを挟んで見つめ合わないでくれません?」
〔★カンナは居心地が悪そうだ★〕
カンナさん越しに、瑞希お兄ちゃんを見ていたらそう言われた。
(だったら、間に座らなきゃいいじゃん~)
む~と思ったけど、瑞希お兄ちゃんはそうじゃなかったみたい。
「ばっ!?変なこと言うなよー高千穂!ほら、続き話せって!」
少し顔を赤くしながら、なにかを否定する瑞希お兄ちゃん。
その言葉にちょっと傷ついたけど、彼の照れ顔を見たら傷は癒えた。
よしとしよう。
〔★とくしゅな回復方法だ★〕
「ホント、ブラコンすね~?じゃあ、言いますけど~」
その様子にため息をついてから、カンナさんは話を戻した。
「『蛇の目』ってチームがあるのは、凛も知ってるよな?」
「今度教えとくわ、高千穂。」
「教えてないんすか、真田先輩!?つーか、凛への質問に先輩が返すってなに!?」
「お兄ちゃん、蛇の目って何ですかー?」
「飛翔連合の外様組だ。」
「獅子島さん。」
答えてくれたのは、お兄ちゃんはお兄ちゃんでも、瑞希お兄ちゃんじゃない。
私の向かい側でウーロン茶を飲んでいる眼鏡のお兄ちゃん。
「凛道、まだ飛翔連合は意識して忘れてないな?」
「はい、飛翔連合といえば、僕が旗揚げの時に絡んできたゾッキーですよね?」
「そうだ。24のチームで組織されているのが、飛翔連合だ。もとはその土地にいるチームで結成してる組織。昔々の徳川幕府で言えば、主人に仕える家臣を『譜代(ふだい)』、後から仕えた家臣を『外様(とざま)』という扱いだ。」
「へーそうなんですか・・・」
ん?じゃあ、その例えを出して説明したとなると・・・
「話に出ている『蛇の目』は、飛翔連合だけど、よそから来たチームってことですか?」
「そういうことだ。」
私の問いに静かにうなずくと、空になったグラスにウーロン茶を注ぎはじめる獅子島さん。
「蛇の目を今までのチームと思って、軽く考えるなよ、凛道。」
「軽くって・・・僕は相手をー」
「お前がどんな敵にも警戒心を忘れていないのは、観察していてわかる。」
「か、観察ですか?」
「いててててて!皇助さん、いい加減かんべんしてください!」
「わはははははは!」
外野の声がうるさかったけど、スルーして話に集中した。
「そのまま、気を抜かずに注意を続けろ。たとえ相手が赤子であっても、油断するんじゃない。」
そう語る表情はいつも通り厳しい。
だけど、目力がいつもよりあった。
だから聞いてしまった。
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