第9話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(9)




「コラ、オメーら!凛を押しつぶしてんぞ!」



「うわ!?突進してくんなよ、瑞希~」


「うるせぇ、烈司!凛を離せ!」


「あん、怖い怖い♪凛ちゃん、そっちは危ないからモニカちゃんのところへ~」


「行かせるか!モニカも離れろ!?」


「えー!?なんであたしまで!?」


「当然だろう?凛道に構いすぎだ。」


「って、そういう伊織こそ、何自然な動きで凛を連れ出してるー!?返せ!」


「わははははは!伊織、パスパス!」


「むっ!?皇助!?」


「奪い取るなー!凛を返せ、皇助!」



「く、苦しいー・・・」


「あー!?今ので凛がさらにつぶれて・・・!?お前らっ、凛を大事に扱え―!!」




〔★サンドイッチ状態だ★〕




アメフトの試合のように、私というボールを奪い合う瑞希お兄ちゃん。


それを観客のように見ていた(?)爆裂弾の2人がつぶやく。




「だっ、大事に扱えだぁ~~~~!!?凛道あのガキ!どこまで瑞希さんを独り占めすりゃ気が済むんだぁ~!?」


「てか、どっちもどっちだろうー?つーか、この場合は『どいつもこいつも』かな、大河~?」


「知るかっ!!」




怒る円城寺君と、呆れるカンナさんの声がかすかに聞こえる。


それよりも大きい声で、俺が!あたしが!と言って、私をもみくちゃにする悪のゴレンジャーご一同様。





「みーちゃんのばかぁ~~~!」


「みーちゃんサイテー♪」


「ゲスイな、みーちゃん。」


「わははははは!喧嘩しようぜ、みーちゃん!」



「途中から目的が変わってるぞ、オメーら!」




〔★みんな自己主張が強い★〕





モニカちゃんとかからの抵抗もあって、なかなか離してもらえなかったけど~





「大丈夫か、凛?あーあ・・・髪がぐしゃぐしゃになって~」


「あ・・・あははは・・・・へーきです・・・・」





私はそのリーダーである瑞希お兄ちゃんの手によって、無事、引っ張り出されたのでした。




〔★ひと段落だ★〕








良い匂いのする物体を、フォークで刺して、パクッと口に入れた。





「美味しい。」





切り分けてもらったローストビーフは絶品だった。


私の言葉に、作った人が嬉しそうにする。





「ほんとぉ~!?凛ちゃん!?」


「うん、美味しいです!モニカちゃん、料理上手なんですね?」


「おほほほほ!いい子ね、凛ちゃん♪もっとお食べなさい!」


「わぁーい♪」


「よかったな、凛。モニカの飯は美味いからな。ほら、こっちのテリーヌも美味いから食ってみろ。」


「ありがとう、瑞希お兄ちゃん!」





瑞希お兄ちゃんの隣で、美味しいご飯を食べて幸せが増す。


サプライズで用意された私の部屋に、私と瑞希お兄ちゃんとみんなで夕食を取っていた。


モグモグしながら食べれば、チラチラと視線を受ける。


4つの目玉が私を見ていた。






「パンも美味いか、凛?」


「うん♪」





それを気にすることなく、瑞希お兄ちゃんを見つめる。


瑞希お兄ちゃんもお兄ちゃんで、私の食べる様子をニコニコ顔で見ながら言った。



「じゃあ、いっぱい食べろよ~大河もカンナも、遠慮するな。」


「はあ・・・・じゃあ、いただきますが~」


「凛のそれは何なんすか・・・・!?」



「カンナさん、人を指さすのは良くないよ?」





モグモグしながら言えば、カンナさんが顔をひきつらせながら言う。





「じゃあ、言わせてもらうけどよ~!オメーの飯の喰い方は良いのかよっ!?」






そう語るカンナさんは、私の口元に注目していた。





「なんで、口に巻いた布の下から食料を摂取してんだ、オメーは!?」



「あ、そういうことでしたか・・・」



(だから、円城寺君と2人で私を見ていたのね。)








4つの目の正体は、爆裂弾の二人。


上がった疑問に、とりあえず答えた。





「大丈夫だよ、カンナさん。小さくしてから口に運んでるから。」


「汚れるだろう!?」


「だから、小さくして口に入れるから。」


「だっから、取れってんだよ!!顔の布!」


「布じゃなくて、瑞希お兄ちゃんからもらったバンダナだよ~!元は、烈司さんが瑞希お兄ちゃんからもらった贈り物を、僕に譲ってくださったんだけどね♪」


「なんか複雑な歴史があるな、オイ!?」


「つーか、いちいち瑞希さん自慢してんじゃねぇーぞ!?」




ツッコむカンナさんと怒る円城寺君。




「つーか、瑞希さんはこれでいいんすか!?」




怒った円城寺君が、私から瑞希お兄ちゃんへと視線を移す。




「なにが?」


「なにがって、行儀悪いでしょう!?顔隠したまま飯食うとか!?」


「別に、いいいだろう。」




円城寺君の言葉に、少しだけ瑞希お兄ちゃんの笑顔が消える。


声も、少しだけ真面目な音程に代わる。




「凛がそうしたいなら俺は良い。」


「なっ・・・ちゃんと教育するんじゃなかったんすか・・・!?」




かすかな変化に気づいて、円城寺君も慎重になる。


そんな円城寺君に気にすることなく瑞希お兄ちゃんは言った。





「『教える』のと『押し付け』んのは違うんだよ。凛はこれでいいんだ。」


「け、けど!」


「やめろって、大河。凛たん、ちゃんとご飯食べれてるぜ?問題ねぇーよ。」


「そうね~凛ちゃん、まるでリスさんみたいで可愛い!うふふふ♪」


「器用に食べれることだ。」


「わはははははは!」



「っ・・・!」





瑞希お兄ちゃん以後、4連発のOK発言に、円城寺君が言葉を失う。


別に、円城寺君は間違ったことは言ってない。


私だって、口にバンダナを巻いて、その下からご飯を食べている人がいたら気になる。


親しかったら、注意する。


でも、瑞希お兄ちゃんは、お兄ちゃん達はそれをしない。


むしろ、この状態を許してくれている。




(もしかして・・・)




私は私で、ある考えがよぎる。





(私が・・・・自分の顔が嫌だって話を信じて、かばってくれてる・・・?)





―顔は・・・見せたくないんです。本当に嫌なので、マスクを、バンダナを取らないでください・・・!―




(あの言葉を信じて?)




私が、顔にトラウマを持ってるっと言ったことを信じて、好きにさせてくれている・・・?




―顔・・・・さらしちゃうと、周りにいる奴らを殺したくなるんです。―




(・・・・うん。なんか中二病的なことも言っちゃってたわ。)




そっちも信じられてるのかな・・・





〔★良くも悪くも言っている★〕







「凛はそれでいいんだよ。オメーらもこれ以上言うな。」







怒鳴ったわけでも、怒ったわけでもない。


普通の声で言ったのに、とても怖い声に聞こえた。


思わず、食べていた手を止めて瑞希お兄ちゃんを見る。


彼はサラダを口にしていた。


私と目が合うと、その中からプチトマトをつまみ上げる。




「ほら。」


「え?」




プチトマトを持った瑞希お兄ちゃんの手が私へのびる。





「ちょ、お兄ちゃん!?」



「瑞希さん!?」






その手はバンダナの下を通って、私の口元にぶつかる。






「野菜も食え。大きくなれねーぞ?」


「お・・・・!?」



大きくなれない!?





(どちらかといえば、トマトは美肌効果であって、骨に関係はないのでは!?)





〔★細かい考えだった★〕








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