第8話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(8)





「つーことだよ、凛!まぁこれはよぉ~」





全員の意見をまとめるように、瑞希お兄ちゃんがその答えを言ってくれた。







「俺らから凛への『無償の愛』ってことだ!」


(愛・・・?)






それも、無償の愛って・・・





「わかったな?」


「は、はい・・・!」




近づいてきた顔に、思わずうなずく。


瑞希お兄ちゃんが言うには、みんなが私へしてくれたことは、無償の愛であって、お金なんていらない。


見返りもいらない、そう言ってるみたい。




「・・・いいんですか?」





ただでなにかしてもらえるって、初めて。


それに甘えちゃっていいの?




「凛もしつこいな~甘えればいいって言ってんだ。凛は俺らの後輩だし、放っとけねぇーぐれー可愛いからよぉ?」


「瑞希お兄ちゃん・・・」


「遠慮しないで、いい加減観念して受け取れ!お兄ちゃんを愛を?」


「わかりました・・・・!」





ニヤリとした顔で言われ、今度は力強くうなずいた。





瑞希お兄ちゃんの気も、お気遣い。


よーく、わかりましたとも!


そこまでおっしゃって下さるならば、頂かないわけにはいきません!




(瑞希お兄ちゃんからの愛ならば、受け止めなくては!!)




〔★その他4人のことが、抜けている★〕





「ありがとうございます!恩返しになるように僕、せいいっぱい、お店のお手伝いとかしますから!」




フワフワ気分で宣言すれば、近くにいた少年が怒鳴った。





「まったくだぜ!!完全にっ!至れり尽くせりだぞっ!こき使って下さいよ、瑞希さん!!?」



「あははははは!そうだな~凛の接客は完ぺきだからな~」


「ぐうおお!?そう言って、また凛道を褒めるんすか!?」


「あらん、凛ちゃんは良いとこしかないわよ~?」


「凛たんサイコー」


「円城寺もご苦労なことだ。」


「わははははははは!」



「よかったな、凛?すっげー愛されてんじゃん~?」


「う、うん!」






カンナさんの言葉に顔が熱くなる。


改めて、大事にしてもらえてるのだと自覚して、嬉しいような恥ずかしいような気持になる。


なんと言えばいいかわからず、うつむいていれば、声をかけられた。





「凛たん、俺らに言うべきことないかなぁ~?」


「烈司さん!?」





火をつけることなく、煙草をくわえたまま烈司さんは聞いてくる。





「ほれほれ、言うことあるんじゃないかなぁ~?」


「え・・・・?」





ニヤニヤしながら、私の言葉を待っているようだった。


それで思い出す。







(あ!そうだ、いけない!私ってば・・・!瑞希お兄ちゃんには言ったのに、烈司さん達には、まだだ!)




まだ言ってない!!






「あの!言うのが遅れましたが!烈司さん、モニカちゃん、獅子島さん、百鬼さんっ!!」



「うんうん♪」


「なぁに?」


「言ってみろ。」


「わははははは!」




「前回は、ご挨拶もなしで、帰ってすみませんでした!!」



「「「「そっちかよ。」」」」





〔★凛からの謝罪、総ツッコミが起こった★〕





「え!?そっちって・・・え?」


(違うの?)




「僕が黙って帰ってしまったことを、お詫びするのでは・・・?」


「何でこのタイミング?凛たん、そうじゃねぇーよ。」


「そうねぇ~あたしたちの求めてる答えとは大違い!ハズレねぇ~」


「不正解だぞ、凛道。」


「わははははは!オメーのボケは面白いけどよー!ビシッと言うことあんだろう!?」




(なんだろう・・・?)




首を傾げながら聞けば、あからさまにがっかりした顔をされた。





「凛たーん、俺らが言ってるのは、そっちじゃねぇーんだよ?」


「大事なのは昔じゃなくて『今』なのよ、凛ちゃん?」


「まぁ、気にしとらんが、忘れずに謝ったことは評価しよう。」


「わははははははは!」



「凛・・・『そっち』はもう終わったことだし、俺が詫び入れてっからいいんだって。」


「え?じゃあ、どういうことですか、瑞希お兄ちゃん・・・?」


「つまりな~」





苦笑いする瑞希お兄ちゃんに小声で聞けば、小さい声で彼も答えてくれた。






「凛、本棚だけじゃなくて、テレビもクローゼットも机もベットも・・・気に入ったか?」




(テレビ、クローゼット、机、ベット・・・・?)





瑞希お兄ちゃん以外の人が、用意した――――――・・・・!?






「あ!?」







それでやっと理解した。






「烈司さん、モニカちゃん、獅子島さん、百鬼さんっ!」


「はいはい。」


「なぁーに?」


「なんだ?」


「わははははは!言え!!」



「僕のために、ありがとうございましたー!!」





大きな声でお礼を言う。






「僕の部屋に置いてくださった家具類、準備してくださり、嬉しかったです!心から感謝してます!ありがとうございます!!」






同時に、90度のお辞儀で頭を下げた。



これに彼らは―――――――――






「はははは!いいって、気にすんなよ、凛た~ん!」


「そうよん!凛ちゃんの喜ぶ顔が見れて、モニカ幸せ♪」


「ふむ、この恩はしっかりと覚えておけよ、凛道。」


「わははははは!やっぱ、ガキだな凛助はー!!」



「っわわっわ!?」





いっせいに手が伸びてきて、頭をぐしゃぐしゃにされた。






(・・・・これが正解だったみたい。)





いろんな力でなでられ、痛かったり、かゆかったり、気持ち良かったりで・・・・






(変なの・・・・なんか、楽しい。)







嬉しい気分になれた。


でもそれは、つかの間のこと。






「ちょっとぉ!あたしがなでれないじゃない!?」


「へ?」




「オメーはどうせ、ほっぺにチューしたんだろう、モニカ~?」


「えっ!?」




「俺はねぎらいの意味でしか触らん。」


「えっ!?えっ!?ちょっと・・・」




「わははははは!ひょろっこいな~凛助ぇ~!?」




「あ~~~~!?」







なでるから、もみくちゃに変わる。




〔★触りたい放題だ★〕




「なんなんすか、あれ!?瑞希さん!?」


「うーん、あいつらもあいつらなりに、凛を可愛がってんだろうな~」


「いや、可愛いがってんのはわかりますが・・・・凛、つぶれてません?」


「へ?」


「ほら。」




「むぎゅ・・・。たすけてぇ~~~・・・・!」



「ああ!?凛!?」





私のSOSに、誰よりも早く気づいたカンナさんが瑞希お兄ちゃんに伝える。


声に出したこともあって、私のヘルプに瑞希お兄ちゃんが叫ぶ。






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