第6話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(6)




トントンと、階段を上がる。




「凛、高千穂!足元に気をつけろよ?」


「はい、瑞希お兄ちゃん!」


「瑞希先輩~大河にも、声かけてやってくださいよぉ~すねちゃってまちゅよー?」


「殺すぞ、カンナ!」


「アンタ達、ケンカしないの!あたしの料理がダメになったらどうすんの!?」





にぎやかに話(?)ながら、トントンと階段をのぼる。






「瑞希お兄ちゃん・・・お兄ちゃんの部屋でご飯を食べるの?」


「へへへ~!いいからついて来い♪」


「行きます。」







私の問いかけに、なにかを企むような顔で答える瑞希お兄ちゃん。


その顔が可愛かったので、詳しく聞かずについて行った。


店舗兼住宅は3階建になっている。


その見慣れた階段を上がる。


そして、廊下を進む。






「なんか楽しいですね~いつもは一階でしか食べないのに、上で食べるって・・・」



(しかも瑞希お兄ちゃんの部屋!ラッキー!)






ご機嫌な私に、瑞希お兄ちゃんが更なる吉報をくれた。






「楽しいのは飯だけじゃないぞ~凛?今日は、凛に見せたいものがあってな~!」



「見せたいもの!?」



(なんだろう?)





チラッとカンナさんを見れば、ニヤッと笑ってウィンクされた。


モニカちゃんを見れば、投げキッスされた。


円城寺君を見れば・・・・




「チッ・・・・!!」




これから人殺しでもするんじゃないかという顔で、舌打ちをされた・・・。





〔★よくわかる対応だった★〕





まぁいいや。


円城寺君は、あれが普通として~





(瑞希お兄ちゃんが私に見せたいっ・・・・何を!?)





そっちが気になる。





(まさか・・・!?指輪でもくれるのかな!?あ、いやいや!それはないね・・・付き合っているわけでもないもん・・・)




〔★弟では、付き合う対象にもされていないだろう★〕






正直、瑞希お兄ちゃんがくれるっていうなら、ティッシュ1枚でもうれしい!




(私のために用意してくれたってことが、重要だもん♪)




期待に胸ふくらませながら、瑞希お兄ちゃんの部屋の前まで行ったんだけどー







「あれ?」







なぜか通過した。




「瑞希お兄ちゃん、どうしたの?」


「なにが?」


「だって、瑞希お兄ちゃんの部屋は、あっち・・・・!?」


「ああ、いいんだよ。」




そう言うと、一番奥の部屋へと向かう。


まだ、入ったことのない場所だった。


その前まで行くと、足を止める瑞希お兄ちゃん。







「凛、4代目総長として、頑張ったからな~」


「あう!?」







そう言って振り返ると、見惚れそうな笑顔で言う。






「可愛い凛に、俺達からプレゼントだ!」







その言葉に合わせて、隣の部屋のドアをバーンとを開けた。







「え・・・・?」


(プレゼント!?)




それも『俺達』って―――――――――・・・・!?







パーン!パパーン!!


パンパンパーン!!


パパパパーン!!







「えっ!?」





考えるよりも早く、響いたクラッカーの音。







「凛たん、4代目総長就任、おめでと~う!」


「わはははは!喜べ、凛助!」


「今日から、ここがお前の部屋だ、凛道。」







それに続くように、聞きなれた声と覚えのある顔が、部屋の中で使用済みのクラッカーを持って立っていた。







「烈司さん、百鬼さん、獅子島さん!?」








いたのは、姿の見えなかった3人の先輩。


クラッカーを鳴らされ、出迎えられただけでもびっくりだが・・・・





「なんですか、この部屋!?」





ただよってきたいい香りと、目に飛び込んできた文字。


天井からつるされた垂れ幕には、『龍星軍4代目デビュー集会お疲れパーティー』と書かれている。


彼らがいる足元のテーブルには、湯気の出ているご馳走が並んでいる。


中でも、その中央にあるホールケーキには『祝!凛ちゃん!』という文字がチョコレートペンで書かれていた。


デコり方からして、モニカちゃんが作ったと言える。




〔★力作ぞろいだった★〕






「これは一体・・・・!?」


「どうだ!?びっくりしたろ~凛!?」






ポカーンと立ち尽くしていれば、真後ろから声がした。


言ったのは、ローストビーフを持っている美味しそうな・・・いえ、美味しそうなお肉を持っているお方。





「瑞希お兄ちゃん!?」


「これが凛に見せたかった場所で、凛へのプレゼントだ!」


「え!?部屋が?」


「ああ!ここさ、ずっとあいてたんだけどよぉ~空にしとくのも寂しくてな・・・。つーことで、今日から凛専用の個室にすることにした!」



「え!?個室!?」



(それはつまり―――――――――)







「僕の・・・・部屋、ですか?」



「「「「「ピンポーン♪」」」」」








私の問いに、5種類の正解音が返って来た。







「凛の部屋だ。好きに使え!」


「ええ!?」




(私の部屋?)







瑞希お兄ちゃんの家に、私の部屋がある・・・?


私の部屋が、できるってこと!?


それも、同じ階で、お隣が瑞希お兄ちゃんの部屋って・・・・!?





(瑞希お兄ちゃんとの距離が近くなったー!?)




〔★センチ単位では近いだろう★〕





「い、いいんですか!?」


「いいもなにも、用意しちまったんだぜ?ほら、入ってみろ。」


「あ、はい!」




そう言われ、瑞希お兄ちゃんの後をついて中に入る。





「ほら、凛たん料理貸しな。持ってやるから。」


「すみません、烈司さん。」


「瑞希―!肉よこせ、肉!」


「オメーに渡すと、1人で食うだろう!?伊織!」


「やれやれ・・・手がかかる。」


「あらあら。料理の置き場所ないわね~とりあえず、机に置いちゃって~円城寺ちゃん、高千穂ちゃん!」


「うっす!」


「りょーかいっす!」




私がリゾットを烈司さんに、瑞希お兄ちゃんがお肉を獅子島さんに渡す。


カンナさん達は、モニカちゃん達の指示で窓際にある勉強机に料理を置いた。


身軽になった体で、改めて部屋を見わたす。


真っ先に目に留まったのは、真新しい本棚。







「立派な本棚ですね・・・!」


「見た目だけじゃないぞ、凛?本や漫画が、たくさん入りそうなものを選んだからよ?」


「え!?瑞希お兄ちゃんが選んでくれたの!?」


「ああ、どうかな?」


「すごくいいです!!」




〔★瑞希が絡めば、何でもよかった★〕






「僕のために!?瑞希お兄ちゃんが用意してくれたの!?」


「凛ちゃん、正確にはあたし達5人よーん♪」


「ええ!?みなさんで僕に!?」


「そういうこと。」






モニカちゃんの補足に、瑞希お兄ちゃん笑いながらうなずく。






「今はまだからっぽだけど、これから凛の荷物を置いていくんだぞ?開けとかなきゃな?」


「そうしますっ!」





はしゃぎながら言えば、優しく微笑みながら頭をなでてくれた。


そして、艶のある唇を動かしながら言った。






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