第5話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(5)
私の解説に、モニカちゃんのテンションがワンテンポ上がる。
「あん♪言われてみればそうかも~可愛い小動物ちゃん!」
「ご理解頂けてよかったです。そういうことなので、モニカちゃんも人間として、これ以上の過剰なスキンシップを小動物にするのは禁止です。いいですね?」
「えっ!?おのれ、みーちゃん・・・!考えたわね!?確かに、触りすぎるのは小型動物へのストレスになる・・・!」
「ちょっと、モニカ先輩!?」
「納得するのかよ!?」
〔★凛とモニカは納得した★〕
「まぁいいわ・・・凛ちゃんのほっぺへキッスは禁止じゃないから・・・!わかったわ。」
「ありがとうございます。わかって頂けて、良かったです。」
「よくねぇーぞ、凛!?」
「お前人間としてどうなんだ、コラ!?」
〔★大河とカンナはスッキリしていない★〕
「それより、ご飯というのはどういうことですか、モニカちゃん?」
「話題変えんのかよ!?」
「そうなのよぉ~みーちゃんから、凛ちゃんが今日来るって聞いてたから準備したのよ!」
「あんたも変わるんかい!?」
「諦めろ、大河・・・!元々凛は、飯のことしかに興味持ってなかったろー・・・」
円城寺君をなだめるカンナさんを気にしつつ、私はモニカちゃんに聞いた。
「準備って・・・夕食を用意してくださったんですか・・・?」
「そーよん!モニカちゃん特製のフレンチよ~ほらほら!」
そう言って、私の肩を抱きながらキッチンの方を向かせる。
そこには・・・・
「すごいご馳走!?」
が、あった。
どれも手間がかかっていそうな逸品ばかり。
思わず、テンションが上がった。
「すごーい!ローストビーフに、綺麗なサラダに、ジャンボグラタンに、テリーヌ・・・・わぁぁぁ~~~♪」
「いいでしょう?全部、凛ちゃんのために作ったの!これでお料理は最後だったからね~」
「最後?」
「あっ!?やっぱり凛だったか?」
私の疑問に、明るい声がかぶさる。
よく知る声と一緒に、上へと通じる階段から誰か降りてくる。
誰なのか、見なくてもわかった。
「みーずき、お兄ちゃぁぁぁ~ん!!」
「りーん!よく来たなぁ~」
パッと駆け出して抱き付けば、笑いながら抱き留めてくれた。
「おにいちゃーん♪」
「あはははは!なんだ、お前は~?猫か~犬か~?」
「えへへへへ!人間でーす!お久しぶりですぅ~!」
〔★感動(?)の再会だった★〕
約一週間ぶりの瑞希お兄ちゃん。
変わってない匂い。
体つき、サラサラの髪の毛。
「元気そうで安心したぞ、凛。」
なによりも、私へ向ける優しいお言葉と最高の笑顔♪
「一週間もたっちまったからな~?体、もう平気か?」
「はい!」
私の頭をなでる彼、首を立てに振って答える。
最後に会ったのは、集会を終えた日。
本当はその翌日に、瑞希お兄ちゃんのところに行こうとした。
ところが、朝起きたら体がだるくて・・・急な発熱でダウンしてしまった。
学校にはいけたけど、微熱が続き、やっと今日、平熱に戻ったところだった。
《軽い風邪なら、学校へ行きなさい。欠席日数も、推薦入試には響くからね?》
(・・・・・瑞希お兄ちゃんなら、そんなこと言わないだろうな・・・)
体調が悪い私へ向けられたお母さんからの言葉。
思い出してしまった嫌な記憶に滅入っていれば、後ろから怒鳴られた。
「コラ、クソガキ!いつまで瑞希さんに、くっつてる!?離れろ!」
「え、円城寺君??」
「瑞希さん困ってんだろう!?犬か、オメーは!?」
「あはははは!気にすんなって、大河。俺別に、困ってねぇーし。」
「瑞希さん!?」
円城寺君からの非難を、笑顔で否定してくださる瑞希お兄ちゃん。
「もう少し凛も、大河みたいに落ち着けばいいが~困った奴だよなぁ―お前は?」
「きゃわ!?く、くすぐったいよぉ~」
「あはははは!」
円城寺君の言葉を茶化しながら、私の顎の下をくすぐる瑞希お兄ちゃん。
それに声を上げて反応したら。
ゾクゾク!!
「はっ!?」
言いようもない、強い視線を感じる。
思わず、気配がした方を見れば―――――――――
「はははは・・・そう、そうっすかぁ~瑞希さん・・・・困ってないっすかぁ~」
(きゃあああああああ!?)
今にも泣きそうな、それも血の涙を流しそうな円城寺君がいた。
〔★強い目力だ★〕
私と目があっているのに、私が見えていないみたいなところが怖い。
それで鈍い私も気づく。
(はっ!?まさかこれが、世間でいうところの嫉妬・・・!?)
ということは、私、円城寺君に嫉妬されてる!?
〔★最初からそうだった★〕
(この状況で考えられることと言えば――――――瑞希お兄ちゃん?)
―凛、瑞希先輩に好かれてるから、大河が焼いてんだぜ?―
カンナさんも言ってた。
(円城寺君、瑞希お兄ちゃんがすごく好きだから、私のことをよく思ってないって・・・・!)
思わず、カンナさんの方をチラ見すれば、にやけた顔で「あきらめろ♪」と笑っている。
瑞希お兄ちゃんは瑞希お兄ちゃんで、この修羅場に気づくことなく、私をなでまわしている。
「あははは♪凛は可愛いなー」
「ふははは・・・・可愛いすか、その手の中の生き物が・・・!?」
「ぷっ!おいおい、怒んなよぉ~大河くーん?」
さわやかに笑う人と、怒りながら笑う人と、完全に面白がって笑ってる人の三つどもえ。
〔★こんな三すくみは嫌だ★〕
「あの・・・本当にごめんなさい、モニカちゃん。黒子ファイブになってまで、来てくれたのに、最後は僕、自分の都合で帰っちゃって・・・・」
「いいのよん♪」
意外とはっきりした声が耳元でした。
見れば、目の前にモニカちゃんの顔。
長身をかがめ、私と視線をそろえながら言った。
「あたしも、人に褒められるようなことしてないもん。こうやって、元気な凛ちゃんとまた会えたことが大事なわけ♪」
「モニカちゃん・・・。」
「とはいえ、他の3人にもお詫びしときなさい。それがマナーだからね。」
「はい・・・」
「じゃあ、このお話は終ね♪」
そう言うと、リゾットの皿を私へと差し出すオネェさん。
「はい、凛ちゃんはリゾットを持ってね。」
「わ、わかりました。」
「はいはい!そっちの2人も料理を持ってちょうだい!円城寺ちゃん、テリーヌ持ちなさい!高千穂ちゃんはサラダの大皿ね?」
「う、うす!」
「はーい!やっと飯にありつけるんすね~?」
「コラ!女の子がそんな言葉使わないの!」
「?ここで食べないんですか、モニカちゃん?」
広い机も、椅子もそろっているのに?
どこへ行こうというのだろう?
「どこで食べるの?」
近くにいる瑞希お兄ちゃんに聞けば、彼はにっこりとほほ笑みながら言った。
「いいとこだよ。ついて来い、凛!」
もったいぶるように言われたけど、そんなあなたが好きだから~♪
「はい♪あなたとならどこへでも~!」
疑わずに、ついて行きます!
ついて行くとも!
「あはははは!いい子だな、凛。こっちこっち~」
「えへへへ~お兄ちゃーん♪」
ニコニコしながら私を誘うイケナイ人♪
ウキウキしながら、先を進む彼について行けば、後ろから声がした。
「だーかーらー!なんで、みーちゃんばっかり、美味しいこと言ってもらえるのよぉ~!」
「そーだぞゴラっ!なんでなんすか、瑞希さんっ!?」
「はぁ~あ・・・うるせぇーなぁ~いい加減割り切れよー、モニカ先輩に大河ー?」
なだめるカンナさんの声にこたえることなく、頬をふくらますモニカちゃんと円城寺君。
そのほっぺは、モニカちゃんが持っているパンよりもふくれて見えた。
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