第4話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(4)
飯塚のことはともかく、転校生か。
(この季節外れに・・・めずらしい。)
両親が選んだ学校は、私の学力よりワンランク下のところ。
だからと言って、世間を気にする2人が、適当な場所なんて選ばない。
「きっと、どこかの有名人の子供だろうね~あるいは、お金持ち?」
そう、それなりにステータスのある学校。
いろんな業界の子供達が通う学校でもあった。
つまり、お金持ちの私立高校らしい場所である。
「そ、そうですか・・・すごいですね。」
「だよねー?俺の彼女も有名人の娘だしさ~時々、テレビの中と外にいるのか、区別がつかなくなるわ~」
「あははは・・・・そうですね~」
(つーか、お前の彼女に見せてもらえよ、宿題!?)
イラッとしつつも、笑顔であいづちを打つ。
ほどなくして、チャイムが鳴って教師が入ってくる。
「お前ら―!席につけ!」
「あ、ヤベ!先公来たわ!またね、菅原さん!」
「お気遣いなく・・・・!」
迷惑なイケメンに笑顔で返し、小さくため息をつく。
(あーあ・・・朝からついてないよ。早く、放課後にならないかなぁ~)
放課後になれば、瑞希お兄ちゃんに会える。
しかも今日は、お父さんが出張で家にいない。
お母さんも実家に帰ってるので、明後日まで帰ってこなーい!
(鬼の居ぬ間になんとやらよぉ~!)
瑞希お兄ちゃんからもらった携帯でメールしたら、『今日は休みだから、絶対来い!』って誘われたし~♪
(すぐ行くから待っててね!私の王子様♪)
彼を思い浮かべて、元気を出す。
瑞希お兄ちゃんを考えて、優しい気持ちになる。
だから、気づけなかった。
私を見つめるアブナイ視線に。
◇
◇
◇
待ちに待った放課後。
人に見られないように、尾行とかにも気をつけて、秘密のロッカーで着替えてから、お店に直行した。
「瑞希お兄ちゃ~ん、来ましたぁ!!」
(瑞希お兄ちゃんからのメール通り、ちゃんと来ましたよ!)
そんな思いで、彼を指名して呼んだんだけど。
「よく来たな、この野郎・・・・!!」
「わー!?円城寺君!?」
待っていたのは、メンチを切る男子。
彼は円城寺大河君。
不良グループ『爆裂弾』のリーダー。
基本、私といる時はいつも怒ってます。
そんな彼が、私服姿で私の前に仁王立ちしていた。
〔★大河が現れた!機嫌が悪そうだ!★〕
「なんでいるの!?」
「いちゃ悪いかボケ!?」
「いや、そういうわけじゃぁ~」
「心配しなくても、あたしもいるぞ~」
「え!?カンナさん!?」
そう言ってヒラヒラと手を振るのは、友達のカンナさん。
円城寺君と同じく、不良グループ『爆裂弾』所属のガールズヤンキー。
凛道蓮になって初めての友達で、私に好意的な子です。
そんな彼女が、私服姿でカウンター席に腰かけていた。
〔★カンナが現れた!機嫌はよさそうだ!★〕
「どうしたんですか、2人共!?」
予想していなかった2人がいたことで、びっくりする。
心配になった。
(爆裂弾のメンバーが来てるってことは、何かトラブル発生!?)
思い返してみれば、彼女達と一緒の時は大変な目にあっている。
ロクなことがなかった。
〔★それは向こうも同じである★〕
気を引き締めながら聞けば、ヘラッとした顔でカンナさんが言った。
「緊張すんなよ、凛!取ってくおってわけじゃねぇーんだよ。遊びに来たんだって!」
「え!?遊びに来たの!?」
「おう!あたしら友達だろう?」
「う、うん・・・・そうだったね。
(そうだったのかぁ~!)
カンナさんの言葉に、トラブルじゃなくてよかったと思う。
同時に、友達は良い者だと感じた。
でも、そこで1つの疑問も生まれた。
「ということは・・・・・・・円城寺君も、僕のところに遊びに来てくれたの?」
「誰が友達だ、馬鹿野郎!」
私の問いに、予想通りのキレ方で怒鳴る爆裂弾のリーダー。
「俺とオメーは『ライバル』なんだ!なれ合いなんかするかよ!?」
(『ライバル』なんだ・・・・)
〔★『どうでもいいやつ』から昇格していた★〕
格上げされたんだと思っていたら、舌打ちしながら円城寺君は言う。
「カンナは遊びだが、俺は親切をしに来た!」
「じゃあ、瑞希お兄ちゃんと二人っきりになりたいので、親切をもって帰ってください。」
「ストレートに言いやがったな、この野郎!?」
「あ、カンナさんは遊んでからでいいですよ。ババ抜きと大富豪、どっちがいい?」
「そういう遊ぶかよ!?ウノはねぇーのか!?」
「オメーも応えるな、カンナ!帰らんぞ、俺は帰らねぇ!居座ってやる~!」
「どうでもいいですよ。それより瑞希お兄ちゃんは?」
「みーちゃんは、3階よん♪」
そんな声と一緒に、体がキッチン側に引っ張られた。
「いらっしゃーい、凛ちゃん!」
チュウ♪
「モ、モニカちゃん!?」
そう言って、私の頬にチューしながら現れたのは先輩のオネェさん。
見た目は男だけど、中身は女の子の朝霧モニカちゃんだった。
「凛ちゃん、いいタイミングで来たわねぇ~!?ご飯の用意できてるわよー!?」
「ちょ、朝霧先輩!?」
「なにしてんすか、モニカ先輩!?」
「そうですよ。ご飯って、どうしたんですか?」
「「そっちじゃねぇーだろう!?」」
私に向かってツッコミをする円城寺君とカンナさん。
「おい、凛!なんでモニカ先輩がオメーにチューすんだよ!?まさか、変な関係じゃないだろうな!?」
「やーん、焼いてるの~?高千穂ちゃーん?残念だけど、高千穂ちゃんの予想通り~あたしと凛ちゃんは~」
「無関係です。危なくもない先輩後輩の綺麗な関係です。」
「凛ちゃん!?」
〔★凛は真顔で否定した★〕
「何でそんな意地悪言うのォ~!?モニカちゃんが嫌なの!?」
「嫌じゃないです。」
「じゃあ、もう一回ちゅーを~!」
「するのは、ダメです。瑞希お兄ちゃんも、動物への接触は一回のあいさつにつき、一回までと言われてますから。」
「「動物!?」」
「ちょ、ええ!?凛ちゃん、あたしを動物扱い!?」
「逆です。僕が触られてる側ですから。」
「「お前かよ!?」」
〔★大河&カンナのツッコミ、動物は凛だった★〕
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