第3話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(3)




顔には出さない不快を感じる私をよそに、クラス内での反応は違っていた。




「あーん、必死なアダム君も素敵~」


「うんうん、健気なところが良いよね~」




パン!と両手を合わせて頼む姿に、教室の中の女子がうっとりする。





「カッコいいなぁーアダム君♪」


(カッコ悪いの間違いでしょう・・・・?)





ポーとする女子達の言葉に、1人冷静にツッコむ私。





(宿題ぐらいできないで、どうするのよ!?)





自分のことを自分でしないとか、私の中ではありえないんですが!?


私はそう思ってるんだけど―――――――




「菅原さんケチよね~宿題ぐらいさー・・・」


「あたし、頼まれたことないのに~」


「大体あの子・・・」




私の周りはそうは思ってないらしい。


冷たい目が向けられたのは、飯塚ではなく私・・・!





(はいはい、わかりましたよ・・・・見せればいいんでしょう!?)





こんな感じで、毎回私があきらめる方向で話をまとめる。


出来るだけ、おどおどした口調で控えめに言う。





「お・・・・拝まないで、飯塚君!私のでよかったら・・・・どうぞ?」


「マジで!?よかったぁ~!」



(本当は良くねぇーけどな・・・!)





表向きは大人しい凛ちゃんだが、心の中は凛道蓮モードで対応する。


しかし、心の底では文句が尽きない。





(毎回毎回・・・・なんで私なの!?)





飯塚とは、グループも違うし、中学校も小学校も違う。


塾とか習い事でも同じというわけでなく、全く接点がない。


それなのに、どういうわけか、私に宿題を見せてくると頼んでくる。


相手が一般生徒なら、ここまでムカつかない。




(飯塚アダムは学校中でも人気の色男。)




奴が私に声をかけるたびに、周りの女子からの冷たい目、うらやましい目を向けられ、注目されて困る。




(大体、こうやって人が苦労した宿題をいつも見せてもらう根性が気に入らないのよね~!)




みんなからの好感度は良いみたいだけど、私は嫌い。


というか、関わりたくないね。





私の渡したノートを振りながら、仲間が待つ場所へと宿題をお持ち帰りするイケメン。


途端に、奴の仲間が私のノートに群がり始める。





(てか・・・貸してって頼んでない奴が勝手に見るのもムカつく・・・!)




〔★凛はそれも気に入らない★〕





類は類を呼ぶというから、飯塚の友達を見れば、飯塚がどーゆー奴かわかる。


困り笑顔を作りながら、その様子を監視していたら言われた。




「凛ちゃん、すごいね~飯塚君にご指名とか?」


「あ、いや・・・きっと、便利な辞書代わりにされてるんだよ。」


「でも、お近づきとかいいよ。他の子達は、面白くないみたいだけど~」


「そうだよ、いじめられないように気をつけてね?」


「ありがとう、マキちゃん、夏美ちゃん。」




友達二人の言葉取り、嫉妬の目で私を見る女子が何人かいる。


人間とは簡単なもので、勉強ができると、案外助かる場合がある。


入学後、こちらのあいさつを返さなかった女子でさえ、自分が勉強で困っていたら、その問題の答えを教えてやれば、次の日からフレンドリーになった。


ダサイ、地味と笑っていたのに、カントリーで可愛いと言ってもらえるようになるのだ。





(見た目で判断されるって・・・・本当に嫌だよ、瑞希お兄ちゃん。)





芸は身助けると・・・勉強だったり、スポーツだったり出来れば、誰かを助ける力があれば、私も助かるって本当だね。




(と言っても・・・私の場合は、いいように利用さえれてるんだけどな・・・)




気づいてるけど、気づかないふりをする


わかってないようにする。


そうしなきゃ、集団の中で生きていけない時だってあるんだよ・・・






(・・・凛道蓮なら、こういう時、正直に言うんだろうな・・・)






宿題を見せてくれ?



いやだね。



何の苦労もしてない奴に、なんで俺が?



消え失せろ、クズが。





(それぐらいは言える。)




〔★辛口だ★〕




自分じゃないけどもう一人の自分を思ったら、嫌な気持ちが吹き飛ぶ。


シミジミと悟るような気持でお空を見上がれば、青い景色が見えなくなった。




(え?なんで??)



「あれ?菅原さんって、煙草吸うの?」


「ええ!?」





そう言って現れたのは、またしても飯塚アダムだった。


視界を遮った犯人もそいつ。


そのことにイラッとしたけど、言われた言葉にもっとイラッとしたので言ってやった。





「吸わないよ!?何言ってるの、飯塚君・・・・!?」





さすがに、嫌な気持ちを隠しきれなかった。


それに気づいた飯塚は、慌てたように言う。




「あ、ごめんごめん!大声は良くなかったよねぇ~?優等生がタバコとか、バレタラヤバいもんね?」


「いいえ、そういう意味じゃないです。」




指摘したのはそっちじゃない。




〔★声ではなく、タバコの方だ★〕





ノートを返しながら失礼なこと言うイケメン。





「私、未成年で学生だから、絶対に吸うわけ――――」




そう言った後で気づく。




「あ・・・!そういえば今朝、お父さんの灰皿を片付けてきたんだった・・・・」


「あーそれか!俺鼻は良いからさ~今日の菅原さんは良い匂い以外もすると思ってさ~」


「っ!?そ、そうですか・・・」




ニコニコする姿に、また女子達がうっとりする。


悪いけど、私はうっとりにはならない。



キモッ!なにこいつ!?


生理的に受け付けられない!


ホント、カンベン!




(瑞希お兄ちゃんとチェンジしてよ、ホントに・・・!)



〔★凛が興味あるのは別の人だ★〕





「誤解がとけてよかった~ありがとうね、菅原さん!」


「いいえ、どういたしまして・・・」


(二度と来るなよ!次から、他の奴に聞けよ!)





作り笑いをしたところで、ふいに飯塚の動きが止まる。




「そうだ!宿題みせてくれたお礼に、菅原さんに最新情報を教えてあげるよ!」


「最新情報・・・?」


「そう!なんかさ~転校生が来るらしいよ。」


「転校生、ですか?」




この飯塚に、良いところがあるとすれば、情報通なところ。


どこで仕入れてくるのか、流行の情報を掴むのが早い。


内容も正確なので、そこに関しては信じていいと判断していた。







(転校生・・・・)



「それは、知らなかったです。」


「まぁね!俺、最先端行ってるから!俺らとタメで、今週中には、G組に入るらしいよ。」



(そこまで把握してんのかよ?)




〔★かなりの最先端だ★〕






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